独Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、現在の米市場で起こっていることを解説した。
市場が乱高下する中での投資戦略をアドバイスしている。
「大きな市場の脱線は今年ではなく昨年だったんだ。
良好なリターン、ボラティリティはほとんどなく、相関関係も有利に働くなど、すべてが投資家にいい方にいった。
これが脱線だった。」
エラリアン氏がCNBCで話した。
同氏は2016年後半頃から資産価格とファンダメンタルズの乖離が発生していると警告し、その主因を金融政策、とりわけ潤沢な流動性だと指摘していた。
FRBの利上げが進み、バランスシート縮小が始まった今、それが逆転し始めている。
一方で、エラリアン氏は、米経済はいまだに好調だと指摘する。
「市場ボラティリティが家計や企業の心理に伝染するのではとの心配がある。
しかし、背景にある経済、労働市場、企業セクターはまだ力強い。」
経済は良好だが、資産価格は下がった。
「十分で予見可能な流動性」が生んだ資産価格とファンダメンタルズの乖離が今収斂を始めたのだ。
エラリアン氏は現在が「長年のつけを返して」いる過程であり、「よりノーマルな状態に戻りつつある」だけだと話す。
この正常化は長期的に見ればいいことだが、短期的には市場・経済に混乱を引き起こすかもしれない。
エラリアン氏は、この局面を乗り切るために2つのリスクを最小化しないといけないという。
- 米市場のテクニカル要因が米経済に伝染するリスク。
- 投資家が市場への信頼を失い、去ってしまうリスク。
エラリアン氏はあくまで米経済の状態は良好だという。
しかし、1-2月の調整の後のように再び米市場が最高値を目指すようなことは考えにくいとし、理由を2つ挙げた。
- 2月とは異なり、世界経済の不確実性が増した。
- 中央銀行が金融緩和からの後退スタンスを強めている。
エラリアン氏は決してFRBの金融政策に対して批判的であるわけではない。
金融政策正常化は長期的にはよいことと考えているからだ。
だから、最近のFRBへの強い批判は、ECBに対するものとの比較において驚いたという。
ECBははるかに弱い経済の中でも金融政策を正常化させようとしているのに、さほどの批判を受けていないためだ。
「FRBがやっていることへの批判はもっと小さくてよかったはずだが、コミュニケーションの方法については責任を持たないといけない。
・・・バランスシート(縮小)の管理は自動運転だと強調すべきでない。
そうしてしまうと、金利政策に過大な負担がシワ寄せされてしまう。」
エラリアン氏は今後ECBがFRBよりはるかに困難な時を迎えると予想している。
市場が正常化する過程での投資戦略を尋ねられると、アンダーシュートしたものを拾うことと答えている。
乱暴なテクニカル調整が起こる時には悪いものだけでなく良いものも売られる。
健全なバランスシート、キャッシュフローを生み出す力が強く、良好な事業モデルを持つ企業がたくさんある。