市場と経済の3つの均衡:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が債務サイクル、政治、3つの均衡、2つの政策対応について独特の見方を総括している。
今回はその中から3つの均衡について紹介する。


「市場と経済において何が起こっていて何が起こる可能性が高いかを理解するためには、金融市場と経済の間の関係を理解することが重要だ。
支出の背景にあるマネーや信用を供給するのは金融システムであり、金融システムと経済は密接にリンクしている。
マネーと信用こそが需要を変化させる燃料だと考えろ。」

ダリオ氏が自身のSNSに書いている。
ダリオ氏の経済観は、金融経済が実体経済の原動力になっているとの色彩が強い。
昔の経済観からすれば、尻尾が胴体を振り回しているように感じられるが、こうしたモデルの説明力が増しているのは否定しがたい。
主流経済学者が用いてきた、金融機関を摩擦としか扱わないモデルへの批判が高まったのにはこうした背景がある。
経済学はなんとか金融をより大きくモデルに取り込もうとしているが、金融市場の側のイメージとはいまだに大きな乖離があるのが現実だ。

ダリオ氏は、市場と経済をつなぐ3つの重要な均衡条件を解説している。

1) 債務拡大と所得・マネーの拡大: 債務の利払い・返済のための要件
ダリオ氏は、債務が拡大すること自体が悪いわけではないという。
債務拡大が、その利払い・返済以上にキャッシュ・インを生み出す限りにおいては持続可能だからだ。
「均衡の債務拡大率は、債務の返済・利払いに必要な所得の成長率と一致する率だ。」
これは政府財政におけるプライマリー・バランスの考えと同一のものである。


2) 経済の供給能力の稼働率: 高くても低くてもいけない
低ければ、社会不安を引き起こし、景気刺激策を催促し、価格調整を引き起こす。
高ければ、インフレ圧力となり、中央銀行は金融引き締めで需要を限定しようとする。

3) 現金・債券・株式の期待リターン
現金の期待リターンは債券の期待リターンより低く、債券の期待リターンは株式の期待リターンより適切なリスク・プレミアム分低くなければいけない。
「期待リターン間のスプレッドは貸出・借入・生産のインセンティブを生み出すため、資本市場と経済が健全に機能するために重要なものだ。
・・・金融仲介者のほとんどの金融上の判断はこのスプレッドを得るために下され、そのため信用拡大・資産クラスのリターン・経済成長の大きなドライバーになる。」
適切なスプレッドが得られないとリスク投資が行われなくなり、経済成長が阻害されてしまう。
これは、期間プレミアムについても言えるし、リスク・プレミアムについても言えることだ。
大きなスプレッドが得られる場合、レバレッジをかけてロングするポジションのリターンが高くなる。
しかし、後にスプレッドが小さくなると、レバレッジの巻き戻しを迫られることになる。

これらの関係のいくつかは経済学者の用いるDSGEモデルに取り込まれているものの、多くはDSGEモデルよりはるかに複雑な要件となっている。
いずれにせよ、経済や市場が求める均衡があり、しばしばそれからの逸脱が起こる。
大きな逸脱の例としてはバブルなどが挙げられるし、それからの均衡回帰には金融危機などが挙げられる。
だから、政府・中央銀行は大きな危機を招かないよう、金融・財政政策によって均衡からの逸脱を小さくするようにしなければいけないし、逸脱が起こってしまった場合は大きなショックとならないように注意しながら均衡への道を用意すべきということなのだろう。


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