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市場と実体経済は全くの別モノ:ローレンス・サマーズ
2020年7月1日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、コロナ・ショックに対する政策の優先順位、経済と市場の乖離について話している。


これは最初から言ってきたことだが、みんな自分が死に至る病、母親に感染して死に至らしめる可能性のある病にかかるかもと考えたら、どんなに金利が低くても、買い物には行かないし、新しい車・洗濯機を買ったりしない。

サマーズ氏がBloombergで、コロナ・ショックに対する金融政策の無力を指摘した。
もちろん、同氏は、金融政策による対処が不要と言っているのではない。
多くの政策が必要とされる中で、自ずと優先順位があると言いたいのだ。

FRBは倒産の連鎖をいくらか防ぐことはできるし、(議会は)所得維持のための給付金をしばらく支給することもできるし、この低金利の瞬間を利用して、我が国の将来に投資するチャンスもあるだろう。
しかし、米経済が前進するためには、基本的にはパンデミックに対処しなければならない。

優先順位は支援策・刺激策ではなく、ウィルスに打ち勝つことにあるのだ。
金融政策は、その進展に応じて講じられていくべきものだ。

サマーズ氏は、FRBに1つ注文を付ける。

「FRBはコミュニケーションのやり方を暦の時間ではなくウィルスの時間に変えていくべきだ。
『ウィルスが完全に制御されてから1年後まで金利をゼロに保つ』というように表明すべきだ。」

サマーズ氏は、株式市場について尋ねられると、悲観的すぎるより楽観的すぎるリスクの方が大きいと推測した。
その理由は経済との乖離だ。
同氏は、米経済が市場と見合うほど良い状態だとは考えていない。
それどころか「職業人生」で最悪の時期の1つだと話している。

真実は、市場価格、これはS&P経済または企業経済とでも呼ぶべきものだが、これは実体経済と大きく異なるものだ。
Appleは米国株市場の時価総額の5%を占めているが、米国内の雇用の0.05%しか占めていない。

この指摘は、経済と市場の乖離を考える上でとても大きなポイントだ。
株価指数で大きなウェイトを占めるような巨大企業では、コロナ・ショックの打撃もかわせるだろうし、中には特需を得た企業も多い。
これを機会にリストラに取り組むところも多いだろう。
こうした企業群で株価が戻り、株価指数が戻るのはおかしなことではない。

一方、雇用の多く、国内の社会・経済の多くの部分は中小企業が担っており、ここがコロナ・ショックで大きな打撃を受けている。
だから雇用や経済成長は振るわない。
しかし、ここの不振は株式市場にはあまり効いてこない。
つまり、経済と市場の乖離といった場合、それぞれが主に指す対象にはズレが存在するのだ。
だから、経済が悪くても市場が良いという現象はおかしいとは限らない。
ただし、市場が良いから経済を放置すべきとはならない。

政策が必要だ。
もちろん金融システムを壊すわけにはいかないが、今優先されるべきはメイン・ストリートなんだ。


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