オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、今年の市場を振り返り、コロナ後を見据えた投資の捉え方について触れている。
FOMO(取り逃す恐怖)が損する恐怖の次にやってきた。
みんなが超リスク回避的になれば、それは素晴らしいバーゲンになることを意味する。
リスク回避的なら買おうとせず、安値で売ってしまう。
マークス氏がBarron’sのインタビューで、コロナ・ショックでの下げ局面を回想した。
市場は昨年の第4四半期、やや陶酔感のあるような上げを演じ、それがゆえショックに対して脆弱になっていたという。
そこにコロナ・ショックが襲った。
市場は急落し、そこで買い場がやってきた。
オークツリーは3月下旬に買いに転じる。
FRBは強力な金融緩和・信用緩和を実施し、市場は急速に反転した。
これが怯える投資家にFOMOを植え付けた。
「みんながリスクに寛容で市場から出ることを不安に思うなら、積極的に買うだろう。
その場合にはバーゲンは見つけられない。
それが今だ。
これはFRBがゼロ金利政策によって企図したことだ。」
これは何も株式市場だけの話ではない。
マークス氏は様々な資産クラスが「互いに公平な関係にある」と表現する。
すべての資産クラスの間である程度の裁定が働いており、いずれの将来リターンも低いということだ。
では、チャンスは存在しないのかといえば、決してそうではない。
マークス氏は、チャンスとなる2つの典型例を指摘した。
- 偉大なテック企業: 高い成長性・収益性を期待されている企業が期待通りの実績を上げていく場合。
- 試練を迎えたテック以外の企業: 人々が予想するほどには悪い事業でない場合。
当然ながら、いずれの場合でも「正しい玉」をつかむことが重要だ。
マークス氏は日頃から、マクロでチャンスが見出しにくくても、ミクロには存在すると言ってきた。
マークス氏は2018年に著書『市場サイクルを極める』を出版し、ディストレストの専門家の出番が近いとの印象を市場に与えた。
コロナ・ショックは短くても景気後退であった。
1つのサイクルが終わったのは事実だろうが、今回はあまりにも特異かつ浅いサイクル終了だった。
それどころか、空前の財政・金融政策によって、マークス氏が説いてきた市場サイクルが失われる、あるいは大きく姿を変えるのではとの観測さえある。
市場全体の前に、人々の生活や産業からして大きく変化するとの見方が広まっているためだ。
マークス氏は、そうした見方と真逆な見方を語っている。
人はとかく起きてもいない変化を騒ぐのが好きだが、マークス氏の言葉は浮ついたところのない現実的なものだ。
私は、以前の仕事や生活が通常のものとしてかなり戻ってくると推測している。
ほとんどの部分、生活は基本的に変わらないだろう。
今は問題外と考えているようなこと、映画館・スポーツイベント・パーティーなども、コロナウィルスが制御されるようになれば、再び普通のことになるはずだ。