投資

アスワス・ダモダラン 市場が伝えようとしているコト:アスワス・ダモダラン
2020年11月9日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、コロナ・ショックと株式市場について書き連ねた全14回のシリーズが最終回を迎えた。
中からいくつか興味深いところを(過去記事との重複を恐れず)紹介しよう。


まず、株主還元と2月14日から11月1日までの株価パフォーマンス:

2019年に株主に現金を還元しなかった企業は、2019年に(配当であれ自社株買いであれ)現金を還元した企業より全体としてアウトパフォームした。
自社株買いの形のみで現金を還元した企業は配当だけを支払った企業より、より速くより完全に回復した。
配当と自社株買いの両方を行った企業は最悪だった。
仮に柔軟性が危機を生き残るカギだとすれば、今回の危機は概して企業を株主還元に後ろ向きにするだろう。
そうなれば、配当より自社株買いの形の株主還元が多くなるだろう。
自社株買いは容易にやめられるが、配当は膠着的だからだ。

コロナ・ショックに関して、日本でも株主還元に対する議論があった。
過去批判されてきた、株主還元が足りないといわれる企業群のやり方が正しかったのでは、といった具合だ。
もちろん危機による下落とそこからの回復までの期間を見れば、そうなのだろう。
(短期トレードなら、そのロジックでいいのだろう。)
一方、企業統治の議論はもっと長いスパンで行われるべきだろう。
特に危機対応の政策によるセーフティ・ネットが効いている企業群ではそうだろう。

ダモダラン教授によれば、コロナ・ショックを生き残るカギは新たな環境に素早く適応する柔軟性だという。
財務面に限るなら、借金が多かったり高額の配当を支払う企業は、柔軟性に劣ることになると指摘している。

ダモダラン教授は、いくつかの特徴のカテゴリーを用い、米国株を2つの銘柄群に分類している。

  • リスクオン群: 若い、高成長、高PER、低・無配当、高債務
  • リスクオフ群: 古い、低成長、低PER、高配当、低債務

この2つの銘柄群でもパフォーマンスを比較している。

注意したいのは、債務以外のほぼすべてのカテゴリーで『リスクオン』群が『リスクオフ』群を踏み台にして価値を増加させている。・・・
単純にいえば、良くも悪くも市場は、危機の恐怖という要素が過ぎさったとメッセージを発しているように見える。
もっとも、企業収益・キャッシュフローは微調整される必要があるだろう。

株価が経済成長率に先行する経験則(60年超)について:

  • 株式リターンと四半期GDP成長率の間には同時では相関がない(やや負の相関)。
  • 株式リターンは将来の四半期GDP成長率と正の相関。
  • 3-4四半期先行させたところで相関係数は頭打ちになる。
  • 相関係数は0.26と、よい予想は期待できない。

現在の米国株の株価水準(S&P 500)について、ダモダラン教授は(11月1日、同指数が3,270の時点で)3,108と計算し、計算結果の読み方を解説している。

株価が割高だとの議論もできようが、そのためには、この危機による経済の打撃がアナリストらが信じるよりはるかに大きく長く続くとの前提を要する。
しかし、もしも、市場がばかげていて株価が説明できないという議論ならば、その考えを吟味し、少なくともあなたの(経済回復とウィルスの動向についての)世界観が市場コンセンサスと大きく異なっている可能性を検討すべきだ。
その世界観は、不合理で間違っているのが市場でなくあなたの方だという不愉快な可能性を残すことになる。

ダモダラン教授の市場重視の姿勢は筋金入りだ。
市場が間違っているという前に、常にまず自分が間違っている可能性をあたるべきと説いている。

市場はすべてを知っているわけではないし、ましてや決して効率的ではない。
しかし、市場とは将来についてのコンセンサスを伝えてくれる並外れたプラットフォームだ。
あなたと私で市場に関する見方が異なる場合でも、すべての人は少なくとも市場が発するメッセージを理解しようと努めるべきなのだ。


-投資
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。