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少し1929年を思い出させる:ロバート・シラー
2021年4月28日

ロバート・シラー教授が、いつものように経済・市場について楽しく深いトークを披露している。


少し1929年を思い出させる。・・・
1920年代終わり、市場はただただ上昇した。
みんな、『高すぎる』と言っていた。
それでも、ただただ上がり続けた。
今そんな感じのムードだ。

シラー教授がBloombergで、現在の住宅市場・株式市場について1929年のブラック・サースデー前を思わせる雰囲気があると話した。
教授に言わせると「居心地のよくない感じ」がするという。
この言葉は実際にブラック・サースデー前にも使われていた言葉だという。
《相場が不安の壁を登る》時の居心地の悪さを表現したものだろう。

26日発表された2月のケース・シラー住宅価格指数は前年同月比11.1%上昇だった。
シラー教授はこの数字の「強さに驚いた」と話し、住宅市場特有のモメンタムが効いていると分析している。
パンデミックが住宅需要を押し上げた可能性があり、供給が追い付かない状態だという。
過去の似た事例を尋ねられると、ブラック・サースデーの3年前と答えている。

「過去で似た時期なら1926年、株式市場のピークの3年前、フロリダを中心に起こったことだ。
車が普及し、フロリダが次の目的地だ、すばらしい投資だというナラティブが広がった。
これが1926-27年にクラッシュした。」

この経験はしばらく人々の記憶に残り、ブラック・サースデーの時に連想を誘ったという。
シラー教授は、サブプライム/リーマン危機前にも似た時期があったと加えた。

株式市場について、低金利が株高を正当化するのかと尋ねられ、シラー教授はNoと答えている。
代わりの投資先が少ないこと、それらの期待リターンが良くないことを認め、株高を正当化しようとする議論に共感しつつも、だからといって正当化されるものではないという。
最近、金利の影響を加味するように考案した「超過CAPE利回り」が良い水準にあると紹介し、問題の本質をあぶり出した。

言い換えると、現時点では株式投資の方が債券投資より見通しが良いということ。
債券は割高と言ってもよいだろう。
ただし、現実のインフレの見通しを反映したものではない。

つまり、相対的な見地で債券より株式が有利ということ。
しかし、債券の価格が経済実勢を反映していない(中央銀行によって操作されている)ため、株高が正当化されるわけではない、となる。

インフレが政治を振り回す

インフレについて尋ねられると、シラー教授は、インフレになるか否かではなく、過去インフレになった時に何が起こったか、当時支配的だったナラティブを話している。

「インフレが2桁になった1970年代あたりを振り返ると、人々はインフレを国が直面する最大の問題と考えていた。
そして、怒りを持って見ていた。」

この怒りはどこに向かったのか。
当時はまだフィリップス曲線が効きやすかった時代だった。
怒りは労働組合に向かったのだ。
賃上げを求めるから、それが売価に転嫁されたのだと。

「これがレーガン革命につながった。
ロナルド・レーガンとその大統領選での地滑り的勝利を助けた。
これによりポール・ボルカーが信用を引き締めることが可能になった。」

プログレッシブなシラー教授が言うことだから大きな間違いはなかろうが、こうした話は眉に唾を付けて聞いておこう。
左派的な社会がインフレを後押しし、それが社会問題化した。
反動として新自由主義が台頭し、景気・雇用を棚上げしてでもインフレを退治する道が生まれた。

現在はまだ賃上げが問題にもなっていない段階だ。
(むしろ、賃上げが起こらないのが問題になっている。)
シラー教授は、現状このナラティブは強くないと見ている。
それでも復活の可能性がないわけではないと話す。

居心地のよくない感じ

シラー教授は、「居心地のよくない感じ」について、もう少し語っている。

「みんな熱烈だったわけじゃない。
ブームになっている市場では、しっかり興奮している。
ブームの市場の終わり、あるいは半ばになると、問題が起こる。
みんなが自分たちのことを正気を失っていると考えているのを知っている。
なんでパンデミックの最中にこんなに買い上がるんだ。
これが居心地悪く感じさせる。」

シラー教授の人間観察はいつも楽しませてくれる。
上げ相場に参加する人が、周囲からどう思われているかを知っているというくだりは、まさにその通りだろう。
今も、例えば暗号資産の投機家たちは、こうした居心地の悪さを感じながら戦いを止めないのだろう。
教授はその心理も言い当てている。

「一方で、場を離れたくない。
FOMO、取り残される恐怖だ。」

シラー教授は、上げ相場の終焉について尋ねられると、ぎゅっと詰まったコメントを返している。

みんなが終わりについて話している時は、市場は上がり続けるものなんだ。
1929年にクラッシュがあった後、戻るのに10年かかった。
でも戻ったんだ。
だから、長期投資家にとっては、終わりは悪くない・・・と思う。
でも、マーケット・タイミングをやろうとするなら、今は少し心配だ。


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