ビル・グロス氏が、ご近所との騒音トラブルの訴訟を終え、久々にInvestment Outlookを公表している。
数兆ドルに上る財政による救済策は政府の後押しで米国(・世界?)経済を支えるケインジアン的な仕事を果たしてきた。
民間セクターがコロナ前の水準またはそれを超えるところまで回復するとの願いだった。
これまでは上出来だ。
でも、現在の9,000億ドルの刺激策の先について考えてみなさい。
2段落以上を訴訟に対する悪口にあてた後、グロス氏が、楽観に振れる最近の市場について、落とし穴をいくつか指摘している。
- コロナによりオフィス、小売店、飛行機などの供給制約が高まり、予想されている経済回復に追いつかない可能性がある。
- GDPがワシントンからの資金投入に依存する「オピオイド」患者のようになっている。
- 失業率をコロナ前の水準まで戻すことが望まれているが、現状は程遠い。
グロス氏は、あるシナリオ、おそらくコンセンサスになりつつあるシナリオについて述べている。
「米国は永遠に『兆ドル』規模の財政刺激策を続けるのか?
もしそうなら、問題は、どうやって資金調達をするかではない。
FRBにはそれができるし、やる意思もあるだろう。」
米財務省が国債を発行し、FRBが国債を買い入れれば、財政ファイナンスは可能だ。
(もちろん、それは将来のリスクを増大する。)
財務省が大規模財政刺激策を継続するならFRBはそれを支援し続けると、グロス氏は読んでいる。
そして、しばらく先に訪れる問題ではなく、目先で訪れる問題に目を向けている。
問題は、北欧や欧州の株式市場が、DoorDashやSnowflakeはもちろん、Microsoftよりもはるかに低いPERで売買されていることを、みんな知っていることだ。
米経済はこれら経済とどんどん似始めている。
米国が欧州の多くと同じように金融・財政刺激策に依存しきった経済になっていくなら、株式市場における米国例外主義もまた説得力を失うのではないか。
グロス氏はそう言いたいのだ。
もしそうなるなら、その時何が起こるかは自明だ。
グロス氏は、金融政策についても同様の可能性を警告する。
S&P 500は2019年初めから約1.5倍に上昇している。
この上昇のほとんどについて(特にグロース株について)実質金利低下によるものだと示唆している。
つまり、実質金利が現状と同様かなりマイナスにとどまらない限り、株式市場は逆回転しかねないことになる。
2020年(主役)のグロース株、SPAC、テスラは、デイトレードに夢中なロビンフッド投資家を喜ばすのに苦戦するかもしれない。
私が好む市場セクターは天然ガス・パイプラインのグループだ。・・・
テスラ?
ロビンフッドの神様のおかげで間違いなく割高だと思う。
昨年は音楽のボリュームが大きいと隣人から訴えられたグロス氏。
今年はボリュームを少し落とし、少しソフトな音楽を選んだ方がいいと結んでいる。