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実質マイナス利回りに投資するか見もの:ロバート・シラー
2021年3月10日

ロバート・シラー教授が、CAPEレシオと超過CAPE利回りを用いて、現在の株式・債券市場の水準について解説している。


私のデータによれば、米国株のCAPEレシオは現在、過去140年の長い期間で2番目に高い数字になっている。
今より高かったのは1999-2000年で、株式投資家にとっては悪い終わり方をした。

シラー教授がダブルライン・キャピタル主催の座談会(2月25日)で、足元の株価水準について尋ねられて答えた。
教授によれば、現在の状況はCAPEレシオが史上最高を記録した1999-2000年のITバブルとは異なるという。

(ITバブルでは)みんな先端的な企業の高い株を買うチャンスだと考えていた。・・・
でも、今はそういう感覚は強くない。・・・
今は絶望やパニックの匂いがする。

「絶望やパニック」が匂うのに、CAPEレシオは狂騒の20年代を終わらせたブラックサースデー直前(CAPEレシオが史上3番目の高さだった)より高い状況にある。
シラー教授は、市場が「今後どこに向かうのかはわからない」と、画一的な予想を避けた。
それにはそれなりの理由がある。
最近教授が提唱した超過CAPE利回りにそれが表れているのだ。

数か月前に出した論文では・・・超過CAPE利回りは4-5%だった。
これは過去140年間の通常の値である5%前後より少し小さい。
驚くことだが、これは異常ではない。

超過CAPE利回りとは、CAPEベースの益回り(つまりCAPEレシオの逆数)の10年債実質利回りに対するイールド・スプレッドだ。
PERやCAPEが明示的に金利の影響を排除していない欠点を補うために考案したのだろう。
株式と債券の利回り差を見ることで、現在の超低金利の影響をオフセットしようとしている。
超過CAPE利回りは数か月前の時点で過去なみの水準だった。
つまり、株式と債券の相対価格という観点では、株式に割高感は見られないという結論になる。

シラー教授は、異常なのは相対株価ではなく実質金利だと指摘する。

「1800年代まで遡って実質金利を計算すると、コロナ危機初期の10年の実質金利は記録的な低さだったことがわかった。・・・
このため、株式に投資するのがそれほど悪い時期でないという状況だった。」

シラー教授が言うように実質金利の低さが異常だと考え、もしもこれが中央回帰すると予想するなら、債券は割高であり下落するという予想になる。
それにともない、株式も下落するのだろう。
つまり、株式は相対的には割高ではないが、債券が割高なので、株式も絶対的には割高という考え方になる。

シラー教授は、コロナ危機初期以降すでに10年金利が上昇している点を指摘する。
現状では超過CAPE利回りは3%にまで低下し、株式は以前ほどすばらしい投資ではなくなったと解説した。

でもまだ大丈夫。
マイナスの期待利回りの債券にみんなが投資したがるのか見ものだ。
米市場はそこを脱出しかけているのかもしれない。
現時点で、株式市場に高値がついているにしても、強い買い/売りのシグナルは出ていない。

座談会のあった2月25日のS&P 500は3,829.34、3月8日が3,821.35。
実質金利の実測値である10年物価連動債利回りはそれぞれ-0.60%、-0.62%。
最近市場は大騒ぎを続けているようにも見えるが、意外と横ばいなのだ。


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