ゴールドマン・サックスが、2021年の世界の主要投資テーマの中で、名目・実質両方でのイールド・カーブのスティープ化を予想している。
来年、経済回復が強まるにつれ、イールドカーブの部分ごとで水準の差が開いてくると予想している。
政策決定者が短期金利を低位に保つと約束している一方、実質成長とインフレが長期側の金利を上昇させるとの期待が高まるためだ。
ゴールドマン・サックスのザック・パンドル氏らの10日のレポートをBloombergが伝えている。
特段、違和感のない予想であり、すでに足元でそうした動きが始まっているようにも見える。
大規模な財政刺激策が採られれば、特にウィルスの脅威が鎮静化するのにしたがい経済成長やインフレの背中を押すだろう。
そうなれば経済成長が実質金利の押し上げ要因となり、さらにインフレが名目金利を押し上げるかもしれない。
一方、短期金利は多くの国でゼロ金利にペッグされている。
これは特に米国について当てはまる。
FRBの平均物価目標の枠組みのためだ。
この枠組みでは、インフレが目標に達しオーバーシュートに向かうまで利上げを控えると約束されている。
「特に米国について当てはまる」理由は短期の政策金利のためではあるまい。
むしろ、中央銀行が長期金利に働きかけるか、インフレが高まりやすいかによるものだろう。
日本の場合、イールドカーブ・コントロールの結果、イールドカーブは10年ものまで地を這っている。
インフレの基調も弱い。
こうした条件に変化がなければ、名目でも実質でもイールドカーブは変化しにくい。
一方、米国の場合、今のところ長期金利をペッグしていない。
だから、イールドカーブはスティープ化しやすい。
ゴールドマンは来年末の米国債利回りを次のように予想している。
・10年債: 1.3%(現在0.96%)
・2年債: 0.25%(同0.18%)
10年-2年スプレッドは現在の78 bpから105 bpに拡大することになる。
読者は、この差がたいしたことがないと感じたはずだ。
むしろ注目すべきは実質ベースのイールドカーブだろう。
ゴールドマンによれば、今後5年間の平均で5年債実質利回りは-2.1%(現在-1.2%)と低下傾向を示すという。
一方、長期の実質利回りのマイナスは来年にかけて小さくなるという(現在-0.8%)。
5年側で90 bp低下し、10年側は上昇するのだから、かなりのスティープ化だ。
実質イールドカーブのスティープ化から連想されることは何だろう。
今、長期債を売って、将来利回りが上がったところで買い戻すということだろうか。
その時が来るまではドルが軟調であり続けるということだろうか。
ゴールドマンによれば2021年末の原油価格は今より約50%高い1バレル65ドルと予想されている。
「特に、私たちの原油に対する強気予想が当たるなら、イールドカーブのスティープ化が予想される。」