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定額給付は疑問符、インフラ投資を:バリー・アイケングリーン
2021年1月15日

IMFのシニア政策アドバイザーなどを務めたUC Bercleyのバリー・アイケングリーン教授が、米国民への定額給付金の効果について疑問視し、インフラ投資を奨めている。


「民主党がジョージア州での上院選決選投票で両議席を獲り、1月20日から両院を支配することとなった。
家計への(1人)2,000ドルの定額給付が再び米国で議論の対象となるだろう。
しかし、失業者へのターゲットを絞った救済が疑う余地なく優先事項であるにせよ、すべての人に2,000ドルを配ることが本当に経済回復の支えになるかは明らかでない。」

アイケングリーン教授がProject Syndicateで、バイデン次期大統領と民主党の財政政策に注文を付けている。
教授は、困窮した人を救うことも、経済回復のために財政刺激策を打つことも賛成している。
ただし、お金の使い方には十分注意すべきというのだ。
アイケングリーン教授はコロナ後のシナリオを2つ想定する。

  • ペントアップ・デマンド: 人々が貯蓄していた資金を消費に回し、経済が回復する。
  • 貯蓄率高止まり: パンデミックが人々の行動を根本的に変化させる。

過去のアメリカ人なら何を考えることもなく前者のシナリオが実現しただろう。
しかし、今回のパンデミックが、アメリカ人への貯蓄率、消費性向などを保守的に変化させた可能性があるという。
もしも後者の場合、国民に2,000ドルを配っても直接消費に結びつかない部分が増えてくる。

アイケングリーン教授は、借り手の側でも変化が起こっているという。
アメリカ人が消費せず貯蓄した給付金はうまく企業によって活用されるだろうか。
教授は、すでに金利がゼロ近傍にある中、借り手に資金を供給しても(事業)投資を促すことができなくなっていると指摘する。
金利がゼロになった時点で、経済活動のボトルネックは資金調達ではなくなっている。
民間がやれる実のあることはすでにやり尽くされているに近い。

アイケングリーン教授は、定額給付ではうまく経済を刺激できない可能性があると指摘する。
かわりにインフラ投資を奨め、「現在の状況では、うまくターゲットを絞ったインフレ投資はわずか2年で元が取れる」とするIMFの試算を紹介している。
教授は「うまくターゲットを絞った」というところが重要と釘を刺している。
インフラ投資の採算はもちろん、直近の刺激策についての両党間の交渉のようにおかしな条項がこっそり差し込まれることがないようすべきという。

実権のある独立のインフラ委員会を設置することは、懐疑論者を安心させ、パンデミックが長く行動へ及ぼす効果により生じるリスクを跳ね除け(経済)回復を確かなものにするのに大きく役立つだろう。

米国には独立財政機関として議会予算局があるが、これは主にマクロの状況・政策をチェックする役割だ。
アイケングリーン教授は、インフレ支出についてその個別の内容をチェックする仕組みを作るべきと主張している。

日本でもコロナ対策と称して実施した財政支出について、奇妙な使途、奇妙な金額、奇妙な発注先の存在が指摘されている。
与党が圧倒的な多数、政府が莫大な予備費を抱えている今、日本でこそ必要な視点なのではないか。


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