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定義によっては日本化は悪いものじゃない:リチャード・クー氏
2019年4月8日

野村総研のリチャード・クー氏が、欧州で心配されている「日本化」の誤解と真相について解説している。
その上で、欧州が置かれている危うい状況を単純明快に指摘した。


「『日本化』についてとても心配されている。
・・・経済がとても緩慢で、デフレで、状況はどんどん悪くなっていく。」

クー氏がCNBCで、先進各国、特に欧州において、日本のような停滞が続くのではないかと心配されている現状を紹介した。
その上で、日本の失われた10年、20年については正しく理解されていない点もあるとした。
その1つ目は、1990年以降の日本のバブル崩壊の過酷さが特異なレベルであった点だ。

「商業用不動産の価格は全国的に87%も下落した。
ニューヨーク、サンフランシスコ、オーランド、シカゴ、みんな87%も下落したらどうなるか想像してみてほしい。」

2007年からの世界金融危機は確かに大きな危機だったし、米国では100年に一度の危機と言われた。
しかし、それでも日本のバブル崩壊とは資産価格の下落幅では大きな違いがある。
日本のバブル崩壊は壊滅的な資産価格下落をもたらし、民間部門のバランスシートを悪化させた。

クー氏は、日本がバブル崩壊の痛手を受けながら、経済が堅調に推移したことを指摘する。

「日本のGDPはバブルのピークを一度も下回っていない。
常にバブルのピークを上回り成長してきた。
そうした資産価格の後でも、1人あたりGDPの伸びも諸外国と匹敵するものだ。
失業率は5.5%を上回ったことがなく、5.5%は極めて短期間で、ほとんどの期間それよりはるか下にあった。
今は2%台だ。
もしもそれが『日本化』ならば、そんなに悪いことではない。」

この点は、訪日した識者が漏らす典型的な感想だ。
日本が長期の停滞の中にあると聞いていた外国人が、極めて豊かで幸せそうな日本を見て意外と感じる。
治安や清潔さだけでなく、実際、日本経済のファンダメンタルズの中には欧米より住みやすい状況を示唆する数字も少なくない。

日本がバブル後もGDPを減らさずにすんだのは、政府が借金して支出を増やしたためだ。

クー氏は日欧共通の問題点として「緩慢な信用創造」を挙げ「バランスシート不況」の構図について解説した。

民間部門が借入を行わず、バランスシートの修復に没頭している。・・・
資産価格が下落しバランスシートが傷むのを恐れて、超低金利でもそれが続いた。・・・
民間部門が貯蓄する側に回っている日米欧では、公共部門がギャップを埋めざるを得ない。

ここで、クー氏はユーロ圏に特有の問題点を挙げる。
マーストリヒト条約により財政赤字がGDPの3%までと制限されている点だ。
これがEU加盟国においてギャップが埋まらない状況を生み出している。

「スペイン、アイルランド、ドイツの民間部門はGDP比7%の貯蓄を行っている。
民間が7%を貯蓄し、政府が3%しか借りられないなら、残りの4%をどうすればいいのか。」


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