大恐慌を連想させるナラティブが足かせに:ロバート・シラー

ロバート・シラー教授が、米景気を支えてきたナラティブの変化の可能性を再びコメントした。
米消費を支えてきたナラティブは景気後退とともに力を失う可能性があるという。


貿易戦争のナラティブは永遠に続くものではないだろう。
しかし、これは大恐慌を連想させる。

シラー教授がBloombergでナラティブの連鎖について話している。
教授は、1930年代の大恐慌の時代にも貿易戦争があったことを指摘。
今では(真偽はともかく)貿易戦争が大恐慌の原因だったとするナラティブが広くいきわたっているという。
人々は貿易戦争を恐れ、経済活動を保守的にせざるを得なかった。
このナラティブの再来を、今多くの人たちが恐れている。

シラー教授は、景気拡大が長く続き景気後退が近づいているとの観測が高まるにつれて、貿易戦争のナラティブまで強まるという。

「景気後退はかなり多くの場合、前回の景気後退の再来に対する恐怖により生じるものと考えている。
だから、これが今私たちに恐怖を掻き立てている。
10年前の世界的な景気後退では貿易戦争は起こらなかったが、まだ景気後退の記憶がある。
だから、それが他のナラティブを一緒に呼び起こすナラティブを作り上げたんだ。」

ナラティブがナラティブを呼び起こす。
シラー教授は、最近のイールド・カーブ長短逆転に対する市場の警戒感を例に挙げる。
イールド・カーブ逆転と景気後退の間の因果関係・予言力が事実であろうとなかろうと、人々がそれを不吉なことと捉えればそれが自己実現的に不吉な将来を実現させてしまう可能性があるという。

シラー教授は、消費主導の米経済を支えてきたナラティブを紹介する。
いわゆる「アメリカン・ドリーム」だ。

『あなたの財産を見せびらかしても大丈夫だ。
実際、そうすべきだ。
それが米国のやり方だ。
米国は資本主義の国で、資本主義を象徴している。』


ちなみにシラー教授は以前こうした考えが本来のアメリカン・ドリームではないと指摘している。
この言葉は当初の崇高な意味合いから、商売や政治のための卑しいメッセージへと変遷してきた。
そして、それをさらに盛ったのがドナルド・トランプ大統領だ。
シラー教授は大統領の著書『億万長者のように考えろ』を紹介し、それが経済に及ぼした効果を説明した。

「何百万ものアメリカ人に億万長者の思考法を教えようとしたんだ。
それは確実に人々に貧しくないようにふるまわせた。
それで人々はお金を使い、今がその時と考えた。」

米消費経済を支えるこうした複合的なナラティブは持続可能なのか。
シラー教授は「変わりうる」と指摘している。

続く可能性もあるが、それをどう正確に予想できるかわからない。
長い間続く可能性もあるが、到来しつつあると考えられている世界的な景気後退の話とともに変化する可能性がある。

米住宅市場について尋ねられると、シラー教授は住宅市場と株式市場の違いを解説した。

  • 株式市場: ランダムな要因が強く、ランダム・ウォークとなり、予想が難しい。
  • 住宅市場: モメンタムの要因が強く、なめらかな変化で、外挿での予想がしやすい。

では、住宅価格を外挿で予想できるのか。
シラー教授は現状は難しいという。
2012年の底から回復する過程で年率10%超あった住宅価格上昇率だが、現在では3%近辺、実質ではゼロに近いと指摘。
微分値を外挿するなら下落ということになるが、そう単純ではないとし、住宅市場の「二極化の危機」を理由に挙げた。

どうなるかは私にはわからない。
住宅価格が下落を始めても少しも驚かないだろう。


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