海外経済

ハワード・マークス 地獄の恐怖も必要だ:ハワード・マークス
2020年7月11日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏は、FRBの市場救済策がゾンビ企業を温存させていると苦言を呈している。


当初聞いて正しいと思ったのは、FRBは流動性を供給することはできるが(事業に)支払能力を与えることはできないということだった。
つまり、失敗した事業を成功させることはできないということ。

マークス氏がチリ公認会計士協会のインタビューで、FRBによるコロナ・ショックへの対応についてコメントした。
FRBは企業にお金をつけることも、リファイナンスの環境整備をすることも、延命のため借金を増やさせることもできるだろうという。
しかし、それはその事業自体の収支を持続可能にすることではない。

私たちの推計では、ハイイールド債の世界の20%がゾンビ企業、債務返済のための必要額よりキャッシュフローが少ない企業だ。
つまり、事業を継続すべきではないんだ。

借金の返済資金を生み出せない事業が営業を続ければ、返済のためにさらに借金しなければならなくなる。
雪だるま式に借金が増える構図だ。

マークス氏によれば、フォールンエンジェルまで買入れるFRBの市場救済策により、ゾンビ企業は借金を増やすことさえできているのだという。
そして、事業が継続する限り、資本は失われ続けることになる。

資本主義の下では通常、創造的破壊と呼ばれる現象が起こり、システムから失敗した事業・支払能力のない事業を洗い流す。
これは良いことだ。・・・
資本主義にとっての倒産の恐怖とは、カトリックにとっての地獄の恐怖なんだ。
地獄の恐怖はみんなを正しい道にとどめる傾向がある。

マークス氏は、FRBが過剰な救済を続ければ、経済においては資源配分が歪み、市場においてはリターンがリスクに対して過小になってしまうと指摘する。
前者は経済の潜在成長力の低下を招くし、後者は投資家や金融機関の潜在的損失を暗示する。

過剰な金融政策に否定的なのは以前からのマークス氏の持論だ。
もちろん、その背景にはディストレスト分野の投資家として不愉快に感じるところもあるのだろう。
FRBが社債、とりわけハイイールド債まで買い入れるという行為は、マークス氏のような投資家にとっては官による民業圧迫以外の何ものでもないからだ。
また、失敗した発行体、失敗した買い手は、相応のペナルティを受けるのが市場のルールのはずだ。
そうした思いがないはずはないが、マークス氏の議論は常に道理に適い、冷静なトーンに留まっている。
正論だから誰も反論しがたい。

マークス氏は、ゾンビ企業を温存してはいけないと明言している。
その一方で、ウィルスがゾンビ企業の線引きを変えてしまった可能性にも気づいている。
それがマークス氏を経済に対して弱気にさせるようだ。
(もっとも、それは同氏のビジネスにとっては強気ととるべきなのかもしれない。)

米国はレストランを再開させ、4つのテーブルごとに1つだけを使うようさせている。
私には収容能力の25%を埋めたレストランが閉店しているより利益が上がるものかわからない。
これは、私が今回の経済回復が困難なものになると考える一因だ。


-海外経済
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。