地に堕ちた経済学と経済学者の信頼:モハメド・エラリアン

Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、正統派経済学と経済学者の問題点を指摘している。
大きな変革なくしては、信頼はさらに失墜するだろうという。


2008年11月、誰も危機の到来を予想しなかったのか女王エリザベス2世はお尋ねになった。
女王と同じように、多くの市民が、政治家への健全な進言は別としても、経済の進展の説明・予想についての経済学者の能力にますます懐疑的になっている。
ある調査によれば、経済学者は最も信頼できない職業とされている。
(もちろん、経済学者より信頼できないのは政治家で、経済学者もまた政治家を信頼していない。)

エラリアン氏がProject Syndicateで、経済学の権威の失墜を指摘した。
リーマン危機といった大きな市場・経済の動揺を主流経済学は制御できていない。
そればかりか、主流経済学こそが危機の生みの親なのではないかとの疑念さえ晴れることがない。
景気が悪くなればとにかく金融・財政政策を講じることが重要だとか、金利がゼロまで行けばマネタリー・ベースを増やせばいいとか、片側の論理ばかりが語られる。
刺激をすれば抑制も必要だとか、どうやったらそれを効果的に実現できるかの議論は後回しであり、最後まで責任もって完遂されているかどうか疑わしい。
ごく例外を除けば、財政はどんどん悪化しているし、金融政策も拡張的になるばかりだからだ。

「主流経済学は分析の重点をあまりにも均衡状態に置きすぎる。
複数均衡のシナリオは言うまでもなく、変化や転換点の重要性を多く無視している。
そして、金融のつながり、行動科学的洞察、急速に進展する技術革新・気候変動・中国の台頭などの趨勢的・構造的力について、経済学者はいつも適切に勘案できていない。」


エラリアン氏は最近目についた3つの経済学者の失敗例を挙げた。

  • ダボス会議での経済状況の見誤り
  • 中央銀行における市場とのミスコミュニケーション
  • 米中貿易摩擦で原則論しか語らない

主流経済学、とりわけニューケインジアンの失敗はこれだけではなかろう。
その最たるものは、量的緩和政策の効果に尽きる。
ポール・クルーグマン教授は、この政策のバック・ボーンとなった考えを高々3次元のチャートで説明してみせる。
すばらしい卓見だが、それが現実の政策となった時、ネットの効果は決して満足のいくものではなかった。
中央銀行の物価目標は市場の期待をアンカーするのに十分に有効とは言いがたく、市場がインフレ期待を持ったからすなわち経済がよくなるとは限らず、さらに分配の問題がむしろ悪化した。
すべてが良くなるようなうまい話が残っているはずがないとはいうものの、日米欧の量的緩和は抱え込むリスクと比べ手放しで満足できるものではなかった。

幸い今でもかろうじて景気拡大が続いている可能性がある。
しかし、経済政策の評価は、少なくとも景気サイクルが一回転しないうちは下しようがない。
次の景気後退期に経済はどうなるのか、経済対策はどうなるのか。
金融政策や政府財政に正常化の時は来るのか。
疑問は尽きない。

エラリアン氏が行動科学や趨勢的変化の重要性を説くのも当然だ。
同氏はIMFでエコノミストを務めた後、投資の世界に入り、PIMCOのCEOとして投資の第一線を歩いた人だ。
そのエラリアン氏が、経済学者にきつい注文をつけている。

大きな修正がなければ、主流経済学は変化する現実の2歩後を歩き続け、経済学者はさらに信頼と影響力を失うリスクを冒すことになるだろう。


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