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アスワス・ダモダラン 国際分散が効かない:アスワス・ダモダラン
2021年2月2日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、2020年の資産クラス間の相関を検証し、分散投資にかかわる困難な現状を解説している。


過去数十年、現代ポートフォリオ理論とデータ・アクセスの組み合わせにより、安定の追求を定量的に実現するため、相関のない投資先が追求されることとなった。

ダモダラン教授が通貨・コモディティ・収集品・暗号資産について書いた自身のブログで、分散投資の基礎について説明している。
このブログ記事はすでにビットコインに関する部分を紹介したが、実は本題は分散投資の方にあった。
つまり、分散投資に資する資産クラスは何か、の議論なのだ。

なぜ、この古典的テーマが今でも議論されるのか。
それは、投資環境の変化とともに資産クラス間の相関に変化が起こっているためだ。

投資家が外国株ファンドや証券化された不動産に殺到するにつれ、好ましくないが予想された結果が生み出された。
市場間の調整が高まり、分散の恩恵が、特に危機時に、減少した。

世界の資産市場には様々なボーダーが存在する。
ボーダーが高ければ、市場はそこで分断される。
分断された場合、ボーダーの向こうとこちらで相関関係は低いか負になるかもしれない。
しかし、ボーダーが低いか取り払われると、両側での資産クラス間の比較が始まる。
高いものがあれば、安いものに流れ、それを押し上げる。
相関は上昇してしまう。
結果、分散効果も低下してしまう。
流動性相場ならなおさらだ。
ほとんどの資産クラスが上がっていれば、相関も上がりやすい。

ダモダラン教授は2020年の主要資産クラス間の相関係数を計算し、いくつか観察結果を述べている。

  • 株式:国内・国際ともに相関が高い。
    「世界で分散された株式ポートフォリオは2020年の間、分散の面ではわずかな効果しかなかった。」
  • 米ドル: 株式と逆相関。特にドル/新興国市場通貨との逆相関が大きい。
    「これは、新興国市場株式保有の分散の恩恵を多少打ち消したかもしれない。」
  • 米国債: 少なくとも2020年は逆相関。
  • 社債: 正の相関。低格付ほど相関が高い。
  • コモディティ: 少なくとも2020年は正の相関。
  • 証券化された不動産: 強い正の相関。
  • 金・銀: 小さな正の相関。
    「金・銀は金融資産(株式・債券)に対する部分的なヘッジとはなったが、1970年代と同じように、相関係数は負ではなかった。」
  • 暗号資産: 金よりも株式との相関が強い。
    「面白いことに、暗号資産と金の相関は低い。」

金・銀について1970年代に触れた理由は、当時がインフレと長い弱気相場の時代だったからだろう。
今後のインフレと弱気相場の可能性を心配する人が金・銀を用いることの有効性について暗示したものだ。
ただし、相関係数が負でないとしても、十分に小さいことは、分散の材料として相応の効果はあるのだろう。
(もっとも、小さな相関係数は2020年についての話であり、もっと長い期間で検証が必要だ。)

暗号資産に関して金との相関が低いことは「デジタル・ゴールド」という宣伝文句に疑問符をつける。
株式との相関が社債なみに高いこと、ボラティリティが極めて高いことを勘案すると、リスク低減という面での有効性は低いというべきなのだろう。
やはり暗号資産は投機の対象なのだ。

ダモダラン教授は、上記が2020年のみの状況である点に注意喚起している。
その一方で、検討の目的が危機への対応であるならば、サンプルを危機時に絞るべきとも言っている。

結論は、今日分散するのが数十年前より困難になっているということ。
昔のように外国株と不動産の保有を増やすという戦略ではもはや成果を望めないだろう。


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