国のためにやっていた中国売りの顛末:カイル・バス

ヘイマン・キャピタルのカイル・バス氏が、人民元の(実質的)ショート・ポジションを閉じていたことを明かした。
正義より金という優先順位が露見してしまったようだ。


「中国は現在の為替レートでドルに換算すると世界のGDPの15%を占めている。
しかし、すべてのクロスボーダーの通貨決済のうち人民元建てなのは1%にも満たない。
だから、私たちにとって重要なのは、中国が資本収支を自由化し、国民に海外投資を許し、法の支配のある国に資金を移すのを許すなら、人民元は1日のうちに40-50%も下落するだろうという冗談みたいなことを理解することだ。
だから、中国がしようとしているのは、人民元を押し上げ、規律を守るのに十分なだけ長く維持し、米国などが望む貿易協定には決して決して合意しないことなのだ。
米国は正しい行動をしている。
市場の痛みをあえて少々とり、中国との関係において長期的なわが国の国家安全保障を守ろうとしている。」

人民元ショートへの強い意志をBloombergから尋ねられて、バス氏が返した答がこれだ。
異例に長い引用になったが、それには理由がある。
(Bloomberg殿、お許しください。)
返事の中身はそれなりに面白い内容なのだが、ここで重要なのは中身ではない。
重要なのは
・全く質問の答になっていない
・長い
ことである。
この不自然な回答の理由は、同じ質問を繰り返された後の展開から明らかだ。

「これは私にとって単なる為替トレード以上のものなんだ。
あなたと視聴者に明言したい。
そうしたポジションをとり、わが国が正しいことを行う一助となってきたが、中国のポジションは今は閉じている。」


さんざんきれいごとを述べ立てていたが、実は中国売りのポジションをすでに手仕舞っていたのだ。
バス氏の言い訳・きれいごとはこの後もしばらく続いた。
よほど言い訳したい気持ちだったのだろう。

バス氏については(金儲けが主たる目的としても)わかりやすいロジックでさまざまな資産クラスの欺瞞をつくアプローチに共感する人も多かった。
日本売りの時にも、日本人は嫌ったが、バス氏に投資する人は少なくなかった。
結果、バス氏が予想した日本国債の暴落は起こらなかったが、円安が進んだことでまずまずのリターンを得ることに成功している。

日本の次に仕掛けた大きなターゲットは中国だった。
中国の債務問題は確かに大きなリスクだったし、同様の考えを持った人は少なくない。
ところが、バス氏に最近やや奇妙な動向が見られていた。
3月には中国売りが実行面で難しいと泣き言ににた話をしている。
極め付きは先月だった。
バス氏は、こともあろうにスティーブ・バノン氏と同調する形で対中強硬策を主張し、中国に融和的な産業界を批判したのだ。

そこにきての人民元ショート・ポジションのクローズ。
バス氏の大義のほどがうかがわれる経緯だった。
せめて国家のためなどと言わなければ、批判などされることはなかったろうに。


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