海外経済

問題はインフレが低下するか否かではない:モハメド・エラリアン
2022年1月8日

アリアンツ経済顧問モハメド・エラリアン氏は、今年末までにインフレが低下するとし、2つのシナリオを呈示した上で、FRB金融政策の先行きを見透かしている。


今回の雇用統計には、FRBが先に発したシグナルを変えるようなことは何もなかった。
マチマチの統計だった。

エラリアン氏がBloombergで、7日発表の12月の米雇用統計についてコメントした。

12月の雇用統計は

  • 非農業部門雇用者数: 199千人(市場予想400-450千人)
  • 失業率: 3.9%(市場予想4.1%、前月比0.3%ポイント低下)
  • 労働参加率: 61.9%(前月比横ばい)
  • 平均時給: 前年同月比4.7%増、前月比0.6%増

労働参加率が上昇せず、雇用者数が伸び悩み、失業率はさらに下がった。
これは雇用の側からは好ましいのかもしれないが、インフレの側からいえば問題だ。
現時点で米社会においてインフレは(強いてレッテルを貼るなら)善ではなく悪になっている。
インフレ退治に本腰を入れ始めたFRBにとって、今回の雇用統計は背中を押すものになったろう。

「市場は、この雇用統計がどちらかといえばFRBをいくぶんよりタカ派にするものであるかのように反応したが、それにはもっともな理由がある。
それはインフレ期待だ。」

エラリアン氏は翌週発表のCPIが7%台、コアが5%超と予想されている点を挙げ、何か大きなことがないかぎりFRBは利上げを余儀なくされると話している。

しかし、市場には、FRBが金融引き締めを進めていけば再び市場の癇癪を引き起こし、結局はUターンを余儀なくされるとの見方も少なくない。
それが、債券利回りの下げ止まり、株式への強気の一因となっていると見られる。

エラリアン氏は、そうした展開が見られた2018年、2013年を例示し、インフレ環境の相違を指摘した。
これら時期はディスインフレが問題となっていたのに対し、今はインフレが問題となっている。
足下のインフレは需要・供給の両面から引き起こされ、今ではインフレ期待の上昇まで顕在化している。

エラリアン氏は今回インフレについて明確な方向性を述べている。
インフレは2022年末までに下がると予想するのだ。
しかし、本当の問題は下がるか否かでなく、そのプロセスにあるという。

秩序ある形で下がるのか、それともFRBが過度な引き締めを強いられて下がるのかが問題であり、市場はそれに直面している。
いずれの場合でも、インフレの力学に起こっていることを考えれば、今回はUターンするのはより困難になろう。

エラリアン氏がインフレ鎮静化を予想するのは、需給の不均衡が解消していくと見ているのだろう。
そこに至るまでに米経済はソフトランディングできるのか、それとも金融引き締めが景気後退を引き起こすのか。
市場は調整程度ですむのか、弱気相場入りするのか。
2つのシナリオが述べられている。
しかし、いずれのシナリオでも、米インフレはすでに需給だけによるものではなくなっている。
ならば、過去10年のように金融緩和にまでUターンするとは考えにくいという趣旨であろう。


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