同じ経済状態なら物価低下の方がいい:浜田宏一教授

内閣官房参与 浜田宏一 イェール大学教授が、2%物価目標に過度にとらわれるべきでないと話している。
政府・日銀における経済政策に対するバランス感覚の変化を感じさせる発言だ。


国民生活にとって望ましいのは、物価が上がることではない。
同じ経済状態であれば、物価が下がった方が国民生活のためには良い。

浜田教授がReutersに話した。
2%物価目標を極めて優先度の高い目標としてきた政府・日銀のスタンスからすれば違和感のあるものかもしれない。
一方、当の教授は、当たり前のことを言っているだけとの認識なのではないか。
教授が設定した条件下では当たり前のことだからだ。

浜田教授を突き動かしているのは、経済学で人々を救おうということ。
そのためには手段にタブーを設けない。
だから、しばしば世の中では禁じ手とされるようなことまで口にする。
そうした傾向は、かつて非不胎化介入を主張していたころから見受けられたことだ。
悪く言えばTPOをわきまえないとなるのかもしれないが、そんなことを言っていては難題は解決できないかもしれない。
同様に今、またTPOをわきまえない話をしだしたのだ。
日銀の2%物価目標について

「絶対に必要というものではない。
・・・
目標を取り下げる必要はないが、物価目標自体をあまり重要視せずに、少し様子をみていくということで十分ではないか。」


と言い切っている。
デフレ・ギャップも解消し、完全雇用が実現している現在、経過の目標である物価に縛られる必要はないという趣旨だろう。
浜田教授にとっての最終目標は人々を救うことなのであり、それ以外のマネタリー・ベース、物価、為替などはすべて経過の目標なのだろう。
また、今年10月の消費増税についても、逆進性への心配を付言しつつ以前より踏み込んだ意見を述べている。

「現在の良好な雇用環境の中で消費税が上げられないのであれば、どんな状況でも上げられない。
一度は良いかもしれない。」

何事も結果が重要なのであり、今は結果がともなっているタイミングなのだ。

経済状況が良いことへの余裕を感じさせる半面、浜田教授はいつもながら喧嘩っ早い気質も垣間見せている。

「雇用情勢が大きく改善しているのに、『物価が上がっていない』と批判するのは、アベノミクスをおとしめるための手段だろう。」

学者として名を成し、公職を拝命する人の発言としては、なんとも違和感を禁じ得ない。
権力の側にある者は、たとえ言いがかりに対しても泰然自若とした態度をとるべきだ。
確かにこうしたピントのずれた批判もないわけではない。
(そうした批判の背景には、2%にならないと金融緩和をやめないという日銀に対する怒り・焦りがあるのだろう。)
しかし、異次元緩和に対する現在の主たる批判は、物価目標を至上目標とするのが適切でないのではないかとの問題提起であろう。
その意味で、異次元緩和への主たる批判は、浜田教授と全く考えを一にしているのである。

本当に恐ろしいのはこの一致だ。
物価至上主義者は別として、多くの人が求める金融・財政政策が収束しつつあることは、今後不測の事態が起こった時に採りうる手段が枯渇しつつあることを暗示しているのかもしれない。
その点で、足元が順調だからといって安心できるような局面ではないのだろう。


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