ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、コモディティ取引における受け渡しのリスクについて対照的な2つの事例を挙げている。
『2つの流しの物語』と題したウェブキャストで、私は、純粋な金融主体が受け渡し不能となった際に投機することの危険について警告した。
それがWTI原油先物5月もので今日起こり、価格が1バレルあたりマイナス40ドルになった。
ガンドラック氏が20日ツイートした。
この日WTI 5月ものはマイナス37.63ドルで終えている。
CME始まって以来のマイナス価格だ。
世界経済が停止したために足元の原油需要が急減し、備蓄設備の空きがひっ迫している。
受け渡しを受けるわけにいかないために、マイナス価格でも売ってしまわなければいけなくなる。
「WTI 5月ものが大幅に上昇した。
1ドルまで上昇した。
『ここに見るべきものはないから、気にしなくていいよ。』」
日本時間に入ってWTI 5月もの価格はプラス圏まで上昇した。
ただし、まだ1ドル台だ。
もちろん、ガンドラック氏は安心しているわけではない。
20日にまだ18%下げていただけの段階で「これは大きい」とコメントしていたことからもわかる。
今回の先物価格のマイナス転落は、コモディティの受け渡しにかかわるものだ。
原油の場合、受け渡しを受けることが不都合なケースだった。
この逆のケースもこの先起こるかもしれない。
ガンドラック氏は前回のウェブキャストでこの可能性に触れていた。
私は、現物の金が『紙の金』よりはるかに良いと話した。
今日のWTI 5月ものを暴落させたのと関係するが反対の理由でだ。
『紙の金』の商品が結んでいる先物取引から受け渡しを希望してもカウンター・パーティーが受け渡しできなければどうなるか?
ガンドラック氏が『紙の金』と呼んでいるのは、金を引き当てにするETF、ETN、信託商品などのこと。
これらのほとんどは現物の金を保有しているわけではなく、先物などで金価格へのエクスポージャーをとっている。
金融市場が大荒れになれば、こうした先物契約のカウンター・パーティー・リスクが無視できなくなる。
金を買っていたはずが、そうでなかったということになりかねない。
そういう極限状態の話だったのだ。
ところが、マイナスの原油先物価格などを見ると、それが絵空事と言い切れないような雰囲気になっている。
FRBができないことの1つは、『紙の金』先物保有者の受け渡し依頼に応じて金を印刷することだ。
だから『紙の金』は紙で払われるのかもしれない。
それなら実際に意味があるのかも。
ドル札なら印刷できるFRB(実際には印刷は政府、発行管理がFRB)だが、さすがに錬金術師ではないから金(Gold)を生み出すことはできない。
結果、金のかわりに紙で支払われることになるのかもしれない。
紙とはドル札またはFRB・政府発行の証券のことだろう。
ドルが危ないと思って金を買った投資家は、結局ドルを受け取るという悲劇に見舞われることになる。
ゴールド・バグと呼ばれる人たちが現物を好む理由である。
こんなワンダーランドが実現しないことを祈ろう。