国内経済 投資

危うさをはらむ円金利についての市場の前提:佐々木融氏
2021年11月29日

JPモルガンの佐々木融氏が、日本をはじめ世界の投資家が日銀の金融政策や円金利について設けている前提について、今後揺らぐ可能性を無視すべきでないと書いている。


実は既に「ディスインフレの時代」は終わり、「インフレの時代」に移行し始めていたところ、たまたま新型コロナウイルスの感染拡大となり、こうした動きが一気に加速してしまっているのかもしれない。

佐々木氏がReutersへの寄稿で、世界的なディスインフレ終焉の可能性について触れている。
原典は日本語、すっきり読みやすい書き方となっており、一読を奨めたい。

佐々木氏が世界の構造変化の可能性を見ているのは労働市場やグローバル化に変化が見られるためだ。
これが日本でも輸入物価を押し上げる要因になっている。

当社は原油価格(ブレント)が来年後半には91ドル程度まで上昇する可能性があると予想している。
日本の輸入物価指数は既に前年比30%も上昇している。

天然資源に乏しい国で輸入物価が30%上昇するのは本当に厳しい。
日本では消費者の値上げに対する抵抗が大きい。
今のところは輸入と消費者の間に入った企業がコスト高を吸収している。
結果、PPIは上がってもCPIが上がりにくい。

佐々木氏はこの差が第2次オイルショック以来の水準にあると指摘、企業がいつまで持ちこたえられるか心配している。
ちなみに、前回PPIが大き上昇した時には、リーマン危機により収まった経緯があるそうだ。

不況こそがインフレの特効薬とは何とも皮肉なことだ。
もちろんインフレがいやだからといって危機の再来を望む人は多くない。
(なかには稀にそういう変な人もいるかもしれない。)

佐々木氏は、市場が日銀の金融政策について一方的な前提を持っている点を心配する。
その前提は果たして鉄板と言えるだろうか。

日本も含めた世界の投資家は、日本の金利が半永久的に上昇しないことを前提にポジションを構築している可能性が高い。
もし、日本企業がコストアップに耐えられず、消費者物価がある程度でも上昇を始めたら、日銀の金融緩和解除に向けた思惑が市場では高まるだろう。
市場に動揺を与え大きく動かすのは、これだけで十分かもしれない。

佐々木被は「動揺」のきっかけとして、ある程度のCPI上昇を挙げている。

以下、浜町SCI 山田泰史よりのコメント:

多くの人が考えているように、日本で持続的に2%のインフレが起こる確率はそう大きくないのではないか。
そもそも日本では2%インフレというのが、石油危機とかバブルが持続でもしないかぎり起こりにくい現象だった。
いつまでも1%程度で行ったり来たりするか、軽く2%を超えてしまうというのがより起こりうるシナリオだろう。
私たちもそうしたシナリオを採用している。
つまり、1%程度での行き来を当面のメインシナリオとして、上離れを当面のリスクシナリオ、長期的なメインシナリオは上離れといった感じだ。

そうした思いとは別に、日銀が金融政策を変更する可能性はいくらも存在すると考えている。
最近の政府が物価上昇を抑制しようとする動きを見せていることから、その可能性は高くなっているだろう。
ただし、その引き金はCPIとは限らない。

実際、日本がデフレだとかディスインフレだとか言われても、それが実感にあっていないと感じる家計は少なくなかろう。
1つには賃金が上がらない面もあろうが、同時に感じ方の問題もある。
リーマン危機の直後、牛丼1杯200台で競争が起こるという家計にとっては嬉しい時期があった。
それが今や税込400円前後。
倍とはいかないが、かなりの差だ。
もちろん200円台が異常値なのだが、人間はこうした大きな差を記憶する傾向がある。
他の分野でのシュリンクフレーションへの不信なども合わせ、インフレへの嫌悪感を強めるかもしれない。
これは、回りまわって日銀への風当たりに関係していくだろう。
つまり、CPIとは関係なく、あるいは統計の不備が主張されるなどして、金融政策正常化の声が大きくなる可能性はある。

もう1つの可能性は為替だ。
日銀の金融政策の目的の1つが為替にあることは周知の事実
日銀が政策を据え置き、他の主要中央銀行が先に金融を引き締めれば、さらに円安が進行する可能性がある。
(実際、過去の景気回復期はそうだったし、その際、日本株は円安により(名目)パフォーマンスが上昇する傾向があった。)
これが、(民主党が支配する)米国等の逆鱗に触れる可能性はゼロではあるまい。
米景気が良いうちはいいが、貿易赤字が大きいのも事実。
(民主党不利と伝えられる)中間選挙後に米景気が後退を始め、労働市場が緩めば、いつもの怖い米国に戻るかもしれない。
日本では財務省主導の介入は行っていないのだから、その場合はターゲットは金融政策になる。

つまり、日本の物価が上がらなくても日銀の金融政策が変更される可能性はゼロではないのだろう。


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