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刺激策は大きすぎ、お粗末:ローレンス・サマーズ
2020年12月26日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)は、困窮する家計・企業が待ちに待った追加財政刺激策について、規模が過大、設計がお粗末と批判している。


(1人)2,000ドルの給付はあまり意味がない。・・・
私は(1人)600ドルの給付でさえあまり前向きではないんだ。
それを2,000ドルに増やすのはかなり深刻な誤りだろう。

サマーズ氏がBloombergで24日、ようやく民主・共和両党で合意に近づきつつある財政刺激策に異を唱えた。

国民の大半を対象にした1人600ドルの定額給付で両党が合意したと伝えられたのは20日。
その後、民主党は定額給付の金額を2,000ドルに引き上げたが、24日下院で共和党に拒否された。

本当の課題は、現在の(経済)拡大を支えることにある。・・・
9,080億ドルの刺激策の法案により今後3か月間2,000-2,500億ドルのお金が配られることになる。
報酬の水準は月あたり約300億ドル、予想されていたより低い。
GDPは月あたり700億ドル、予想されていたより低い。

配るお金の規模ばかりに注目が集まり、多ければ多いほどよいとする風潮をサマーズ氏は問題視する。
9,080億ドルという数字は、賃金の下振れ分はもちろん、GDPの下振れ分よりも大きな規模だ。
この中に払いすぎ、バラマキが紛れ込んでいないかとの疑問を持つことは健全なことだろう。

サマーズ氏はこのビデオで失業給付の上乗せ分について言及していない。
それが困窮した人たちを救済するためのお金だからだろう。
一方、定額給付はどうだろう。
困窮した人たちへの救済といえるだろうか。

サマーズ氏は、一連の財政刺激策について「前例がない」と指摘する。

すでに穴を埋めるよりも大きな刺激策が行われている。
多くの穴について、人々は支出をしたくないのではなく、支出できないんだ。
みんな飛行機に乗れないし、レストランに行けないんだ。
私は必ずしも、今の状態を越えて消費支出を促進することに優先順位をおくべきとは思わない。

政策はタイミングよく打つことが重要だ。
今は、困窮した人を助けるべき時か、社会活動を活性化するよう刺激策を打つべき時か。
米国の感染状況は依然厳しい。
ウィルスで消費がしにくい今、あるいは極力感染につながる活動を控えるべき今、やるべきことは何なのか。

サマーズ氏はさらに、穴より大きい刺激策に潜在的リスクが存在すると指摘する。

一時的なオーバーヒートを引き起こすリスクがある。
もっと州や地方政府を支援してほしい。
もっと検査やワクチン開発にお金を使ってほしい。
2,000ドルにするのは大きな誤りだ。

民主党が1人600ドルを2,000ドルに増額した理由は、トランプ大統領の意向を入れたものだ。
共和党の代表であるはずのトランプ大統領の意向を、共和党が拒否するという奇妙な構図が出来上がっている。
民主党中道派や伝統的共和党員を中心として、ポピュリズムを警戒する声が多くなっているのだろう。

サマーズ氏は相変わらず歯に衣着せず吠えまくる。

「指摘せざるをえないのは、2つの両極端が合意すると、ほぼ確実に何かばかげたことが起こるということ。
ジョシュ・ホーリー(上院議員)、バーニー・サンダース(上院議員)、ドナルド・トランプがこぞって(給付増額の)アイデアを支持し始めたら、逃げ出して隠れるべきだ。
財政刺激策が望ましいと信じる、私の仲間のケインジアン・スーパーリーグの多くはこれ(給付増額)に好意的だろう。
しかし、基本的には良いアイデアでも、時として大きすぎ、設計が良くないこともあるものだ。」

サマーズ氏はこの後「設計が良くない」点について2つのパターンを挙げている。
片方は技術的にばらまきすぎになっているケース。
もう片方はなかなかレベルの高い話らしい。

「1つ目は豪勢な昼食費(の損金算入)の復活だ。
これはレーガン政権で剥奪されたものだ。
原則において、どうして社員食堂が税制上の控除とならないのに、金持ちの役員の昼食は所得とならずすべて控除できるんだ。」

このコロナウィルスとまさに密接に関係するアイテムについて、サマーズ氏は「この10年で最悪の税の条項」と評している。
なるほど、コロナ・ショックに便乗して、合意の条件として無関係のアイテムを滑り込ませようという魑魅魍魎が多いのだろう。
そして、それを飲むのを必要悪として許容する文化があるのかもしれない。

しかし、サマーズ氏は軽々しい妥協を許さない。

勘違いしてはいけないのは、偶然こうなったのではないということだ。
みんながこうしたからこうなっているんだ。
今もこのままなのは、みんなこれが誤りだと知りながらもそれに抵抗する勇気を持たなかったからなんだ。


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