利下げ余地のない中銀にできること:門間一夫氏

日銀で調査局長などを歴任した門間一夫氏が、2%物価目標と日銀に残された政策ツールについて論じている。
淡々とした議論から、伸びきった金融政策の現状がうかがわれる。


「第1に、日本で物価が上がらないのは金融緩和が足りないからだ、という考えは事実によって明確に否定された。
第2に、物価が上がらない状況においても、雇用の大幅な改善や戦後最長クラスの景気拡大は実現し得る、という重要な事実も確認できた。」

異次元緩和の6年間で判明した2つの事実について、門間氏がReutersへの寄稿で書いている。
早合点してはいけない。
門間氏は決して異次元緩和を批判しているのではない。
むしろ、上記の指摘は異次元緩和の成果を認める側面も持っている。
門間氏が言いたいのは、物価目標の位置づけなのだ。
かつての日銀は、低成長・低インフレの日本経済が、世界標準の2%物価目標を掲げることに抵抗した。
2013年、日銀は世論の圧力に屈したが、門間氏が議論しているのはこの部分なのだ。
ただし、門間氏はかつての日銀が正しかったから直ちに是正せよと言うわけではない。

「それならば2%目標はもう撤回しても良いのかと言うと、事はそう単純ではない。
2%程度のインフレがあった方が日本経済はさらに強くなる、という可能性まで否定されたわけではなく、2%目標が世界の常識であることにも変わりはないからだ。」

確かに、インフレは2%程度で止まることを前提とできるなら、0%より1%、1%より2%の方がいいのだろう。
人々はお金を使いやすくなるし、金融政策もやりやすくなるのだろう。


門間氏は続ける。

「したがって、ここからの日銀の課題は、2%インフレが困難な現実の下でそれを目標に掲げ続けることの矛盾が、経済に対する副作用を生むリスクを最小限に抑えることだ。 」

すごい議論が行われるようになった。
実現が困難と考えられる目標が保持され、それが是認されている。
あたかも実現不可能なノルマを課すブラック販売会社のようではないか。
せめてもの救いは面従腹背が前提とされており、それが黒を灰色にしている点だろうか。

門間氏は昨年、日銀が物価目標だけでなく需給ギャップにも高いウェートを置くことを提案している。
こうすることで2%物価目標への偏重を回避できるという提案だったのだろう。
しかし、2%目標は動かしがたく、また日銀自体が建前とは別にそうした変化を見せている。
そこで、門間氏の側も本音と建前のダブル・トラックを許容したということだろうか。

話を金融政策の本論に戻そう。
経済がそう悪くないことを勘案すれば、今考えるべきは次に悪化した時の対応であろう。
門間氏は「利下げ余地のない中銀にも、確実にできることはある」と期待を抱かせる。

「1つは、過度の物価上昇に対しては利上げをすればよいし、もう1つは『最後の貸し手』として決済システムや金融市場の安定を守ることも可能だ。」

期待は裏切られたようだ。
これらは景気刺激策からは程遠い。

「このどちらの点においても、中銀の力は依然として強い。
しかし、景気後退やデフレに対してはそうではない。」


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