利下げが人々の心理を悪化させた:ロバート・シラー

ロバート・シラー教授が、金融緩和の行動経済学的側面を解説している。
経済が堅調な中での金融緩和は、人々に不必要な恐怖感を植え付けるのだという。


重要なのは人々の中で始まったナラティブだ。
久しぶりの利下げに際し、25 bpは大した意味はないが、新しい時代が始まったと感じたんだ。
みんな景気後退を心配しだした。

シラー教授がCNBCで、7月31日のFOMCでの利下げが人々の心理に及ぼした影響を解説した。
教授はFOMCの直前、経済の実勢を重視するなら利下げでなく利上げすべきと指摘していた。
しかし、FOMCでは教授を始め多くの人が予想したとおり25 bpの「保険的利下げ」が決定された。

実証研究でノーベル賞を得た行動経済学者がここで心配したのは経済の過熱ではなかった。
心配したのは、人々に「警戒感」が広まったことだった。

医者が突然ペニシリンを処方したら、患者が本当に病気なんだと思いつめてしまうようなものなんだ。

市場心理の悪化は言葉遣いにも現れているのかもしれない。
シラー教授は、全米経済研究所による「景気後退(recession)」という言葉の意味が、景気が悪化することだと念を押す。
一方、現在は緩やかでも景気拡大が続いているのにこの言葉が広く使われていると指摘している。


シラー教授はこうした心理的な逆効果を回避する意味からも、FRBには利下げをしない道もあったのではと滲ませている。

米国はインフレについてはかなり成功している。
2%目標に近づいてきた。
そこから波風を立てるべきじゃない。

もちろん心理的な逆効果が起こらなければ、利下げは大成功だった。
景気の悪化を回避し、インフレ上昇にも寄与しただろう。
しかし、もしも逆効果が大きくなれば、景気にもインフレにもブレーキとなりかねない。

シラー教授は、もう1つ利下げが心理に逆効果を及ぼす例を挙げている。
金融危機後にFRBが利下げを行い、FF金利誘導目標が0-25 bpになった時のことだ。

「利下げして、ゼロという言葉を使ったことで、人々は日本の『失われた10年』と同じカテゴリーに入れられてしまった。
FRBはゼロまで利下げすべきでなかった。
ほんのちょっとだけゼロより上にとどめるべきだったんだ。
ゼロという言葉、Zワードを使うべきでない。
人々を恐れさせてしまう。」

もっとも、シラー教授は、それほどFRBに対して心配はしていないようだ。
行動経済学的側面も含めて、うまく舵取りをするだろうと期待している。

「FRBの人たちはとても分別のあるジェネラリストで、考える上で行動ファイナンスも少し取り入れている。
大衆がニュースを見て、25 bpの利下げよりもニュースに対して多く反応していることを気づいているはずだ。」


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