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円高になりにくくなっているのだから・・・:佐々木融氏
2019年5月19日

JP Morganの佐々木融氏が日本銀行に、円相場の構造変化にも配慮した政策運営を求めている。
日銀は金融政策正常化による円高を過大に懸念しているという。


「今の金融緩和策はもはや制度疲労していると言えるが、日銀が政策を大胆に変更し、たとえばイールドカーブをスティープ化、つまり長期金利を上昇させることに躊躇するのは、円高を警戒しているからであろう。 」

平成が幕を下ろしたところで、佐々木氏がReutersにこの時代の振り返りを書いている。
もちろん、その主たる焦点はアベノミクス以降の特に異次元緩和にある。
非難するのではなく、淡々と何が行われ、結果として何が進展し、何が起こったかが書かれている。

佐々木氏は、2016年の日銀の「総括的な検証」後、つまり、イールド・カーブ・コントロール導入後の3年弱についてこう書いている。

「ここまで手を変え品を変えてもインフレ率が目標に到達しないのだから、これまでの金融政策の延長線でインフレ率が上昇するとは思えない。
多くの人がそう感じる中では、いくら日銀が目標を達成するまで現状の政策を続けると言っても、インフレ期待を押し上げることができると考えるには無理がある。」

異次元緩和という政策が、徹底的に金融緩和を行ってきたのは間違いない。
それがすでに6年続き、現行の枠組みももう3年近くになる。
効果の一部が低減するのも当然と言えば当然だし、副作用が積み上がるのもしかりだ。
金融緩和の効果発揮の一端を担ったり、社会の根幹を支えたりするのに欠かせない金融機関(銀行、年金、保険など)は悲鳴を上げ続けている。
部は悪くなっているのに、日銀は現行のスタンスを続けざるをえない。

佐々木氏はその理由の1つに円高への警戒を上げているのだ。
しかし、同氏はこれが杞憂だと指摘し、円金利上昇が日米金利差に与える影響を次のように予想する。

金利水準は日本より米国のほうが圧倒的に高いため、おそらく日米金利差は縮小ではなく拡大する。
つまり、日銀がマイナス金利を導入した後に、日米金利差が逆に縮小し、円高になってしまったのと逆の現象が起きる可能性がある。

円金利よりドル金利の方が動きやすい状況にあるため、日本の金融引き締めによる金利上昇は円よりドルの方が大きくなるというのだ。
結果、日米金利差は拡大し、円安ドル高要因になると示唆するものだ。

佐々木氏は以前から、日本の国際収支の構成から円高が進みにくくなったと解説し、今回もそれに触れている。

日本の貿易黒字が極端に減少してしまった今、一時的に円高が進んだときに慌てて円を買う動きより、それを好機と捉え円を売る動きのほうが圧倒的に大きくなっている。

かつての日本の経常黒字では貿易収支が占める割合が大きかったが、今では所得収支が主役になっている。
貿易黒字は外貨で受け取る輸出代金で、円転するニーズの高い資金だ。
仮に円高になりそうなら、急いで円買いを済まそうとの思惑が働く。
これがさらに円高要因となる。

しかし、所得収支は投資リターンであり、円転のニーズはさほど大きくない。
そのまま現地で運用される場合も多いだろう。
円高になったなら、むしろ海外投資を増やそうというインセンティブになる。
円高が円高を生む連鎖が働きにくい。

こうした一連の佐々木氏の読みがピタリと当たるなら、日銀の円高への警戒は杞憂ということになる。
非常に説得力のある説ではあるが、結局はやってみなければわからないところが多いから、日銀も悩みどころなのではないか。

ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏は今月のウェブキャストで、米債券市場が米ドルの低下リスクにさらされているとコメントしている。
海外投資家が為替ヘッジなしの米国債投資を行っているため、米ドル相場が軟化した場合に為替損を嫌って米国債が売られるという懸念だ。
まさに日本の機関投資家を匂わせる予想だ。
結果、米金利が上昇するという点で佐々木氏の読みとも矛盾しないのだが、ガンドラック氏がそこですぐドル高に戻すと見ている節はあまりない。
同氏にしては珍しく長らくあたっていないが、同氏はこの数年ドル安予想を続けている。


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