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ハワード・マークス 全部バブルでも投資を続けるワケ:ハワード・マークス
2021年8月6日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、十八番としてきた経済・市場サイクルに関し、今回のサイクルの異常性について指摘している。


2、3、4年前みんな私にハイイールド債バブルなのかと聞いた。
私は、そうじゃない、債券バブルだ、と答えた。・・・
今日では『全部バブル』だ。

マークス氏がBloombergで、現在の市場に対する見方を吐露した。
同氏は、歴史的な超低金利を背景にほとんどの資産クラスの価格がバブルの領域にあると考えている。
ただし、超低金利であるがゆえに、相対的には割高感がさほど感じられないとも言ってきた。
つい最近も、現在は積極的になるべき時でも慎重になるべき時でもないとし、フルインベストを継続すべきとの見方を示している。

ただし、こうしたマークス氏の考えについては、疑問を呈する人も少なくない。
なぜなら、相対価格の議論とは、足元の超低金利を前提とした、いわば静的な議論に他ならないからだ。
マークス氏といえば、2018年の著書『市場サイクルを極める』でわかるとおり、サイクル、つまり動的な観察を重視する投資家として有名だ。
なぜ、マークス氏は動的な視点を棚上げしたように見えるのか。

マークス氏は、経済・市場サイクルの一般論を解説する。

「通常、株式市場の高値は経済のピークとかなり近いタイミングで起こる。
そして、経済が悪化して市場も悪化するか、市場が先に予感し経済が追随する。」

ところが、パンデミックという通常でない原因による景気後退からの回復期である現在は、「通常」と大きく異なる状況にあるという。
株価は「誰の尺度から見ても高い」のに、経済は「サイクルの初期」になっている。
これが「通常」のサイクルにおける定石を不確かなものにしているのだ。

「経済回復は始まったばかりなのに株価はすでに高く、これは良くないといえるかもしれない。
逆に、株価は高いが、これから大きな経済成長がやってくるともいえるかもしれない。
結局はそれをどう考えるかによるんだ。」

話題がサイクルに及べば、当然のように、そこに大きな影響力を及ぼすFRBの金融政策の話になる。
マークス氏は、FRB議長ならどう舵取りをするか、と尋ねられ、市場参加者には耳の痛い考えを述べている。

親は子供のタントラム(癇癪)を恐れてはいけない。
FRBは投資家のタントラムを恐れてはいけない。
FRBは経済にとって正しいことをしないといけない。
FRBの仕事は、投資家を儲けさせることではない。

こうした厳しい姿勢は、もちろんマークス氏がディストレストの投資家であることと関係しているのだろう。
長く続いた金融救済策はある意味、オークツリーのようなディストレスト投資家に対する営業妨害のようなところがある。
とはいえ、マークス氏の注文の意図はそれだけでもあるまい。
金融市場にも実体経済にも新陳代謝は必要だ。
ただただダラダラと生きながらえさせることが経済・社会にとって最善の道とは限らない。

経済が強く失業率が低下していてインフレの脅威がある時には金利を自由に変動・上昇させないといけない。
非常時の手段をやめ、手遅れにならないようにしないといけない。

マークス氏は、FRBがリーマン危機後の回復期に何度も金融政策正常化のチャンスを逃してきたと指摘する。
経済が極めて強い今回こそチャンスを逃してはいけないと警告する。

この危機感の背景にあるものは何だろう。
1つは、マークス氏の人生を変えるほどのインパクトがあったインフレ昂進への危機感かもしれない。
あるいは、次に不測の事態が起こった時に十分な緩和余地があるようにしなければいけないとの思いかもしれない。
多くの人は前者の記憶がない。
後者については、つい最近困難を迎えたのに、それを十分に認識できていないようだ。


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