海外経済 政治

全く異なる世界になった:ジェレミー・シーゲル
2019年5月6日

ウォートンの魔術師ことジェレミー・シーゲル教授が、FRB・FOMCの議事のあり方に注文をつけている。
その中で、米経済・市場に関する重要な見通しを述べている。


「15年間(のFOMC)でFRB議長の政策に連銀総裁・理事から反対があったのはたった1度切りだ。
15年もあれば間違いだってたくさんあったはずだ。
もっと活発な議論がなされ、誰かが不同意であってもおかしくなかった。」

シーゲル教授がCNBCで、FOMCの議論のあり方について疑問を呈した。
毎回12対ゼロの満場一致で終わるFOMCが形骸化しているのではとの心配だ。
教授は、不同意のメンバーが出るくらい多様で活発な議論が行われることを望んでいるようだ。

シーゲル教授がこうした意見を述べるのは、昨年12月のFOMCの議決、市場との対話に疑問を持っているからだ。
教授は、FOMCのタカ派ぶりに驚いたという。

「私はFRBが市場の兆候を見ていないと思った。
2019年には2-3回も利上げはしないと言うべきだった。
FRBはそれをわずか数週間後に認め方向転換した。
しかし、なんでその間に20%もの市場下落を被らなければならなかったんだ。」

シーゲル教授は、12月のFOMCがタカ派に振れすぎた一因がFOMCの議論のあり方にあると考えているのだ。
メンバーが多ければ不同意もあっただろうし、議決の票も割れていいと話している。

そもそもこの議論の発端は、トランプ大統領がサウンドしたFRB理事候補2人がいずれも指名を辞退する状況に追い込まれたことにある。
1人は経済・金融の知見が深くないため、もう1人は偏向・発言などが共和党からも問題視されたためだった。
シーゲル教授は個別の人選には触れず、一般論として経済学者に限る必要はないと、多様性を意識した意見を述べている。

シーゲル教授は、パウエル体制のFRBがタカ派すぎたと考えている。
その背景には、米経済の趨勢に対する見方があるようだ。

米国ははるかに低金利の世界になった。
米国の中立金利はゼロであり、インフレ調整後の短期FF金利と同水準だ。
これが1980-90年代のように2-3%に戻るとは予想されない。
まったく異なる世界であって、それを認識しないといけない。

New Normalが依然続いているというのか、趨勢的停滞に入ったというのか、日本化(ジャパニフィケーション、ジャパナイゼーション)が進んでいるというのか。
とにかく米国も趨勢的に低金利が継続するとの見方だ。
FF金利と中立金利が同水準なら、すでに政策金利による金融緩和は効いていないことになる。

そうした認識を持つシーゲル教授からすれば、現状さらなる利上げはありえないとなる。
教授は、こうした見方を代弁してくれるFOMCメンバーがいてもいいと考えているのだ。
もちろん既存メンバーにもハト派はいるが、彼らはそれでも反対票を投じはしない。
予定調和の中での行動を続けている。

この点については日本銀行の金融政策決定会合は先を行っている。
経済・金融の専門家ばかりでなく、幸い今のところそこそこの多様性がある。
以前は金融緩和のペースを心配する人たちが反対票を入れていたし、今は追加緩和を主張する人が反対票を入れている。
本当なら、金融緩和に慎重な人もいるとよいのだろうが、当面はいいだろう。
仮に金融緩和に慎重だからといって、当面の間これ以上金融緩和を縮小するという選択肢は考えにくいからだ。

シーゲル教授はFRB理事人事について至極常識的な提案をしている。

「私が感じるのは、誰か異なる視点の人をFOMCに入れてみたらどうかということだ。
そうすれば、テーブルのみんなを尖鋭にさせるだろう。
それは全然悪いことじゃない。」


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