ハワード・マークス
 

先延ばしを清算する日に成功する秘訣:ハワード・マークス

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、試練の時に起こること、成功の秘訣を説いている。


信じるかどうかにかかわらず、いずれ景気後退がやってくる。
ハイイールド債のデフォルトはほぼ10年間平均を下回ってきた。
いずれ債券のデフォルトが増え、それが私募の債務の市場にも影響を及ぼす。

マークス氏があるインタビューで、主戦場とするディストレスト市場の見通しについて語った。
景気が悪化しデフォルトが増加した時に起こることを大きく3つ挙げている。

  • 資産価格下落: 好景気が長く続いたため、デフォルト増加は人々にいっそう大きなショックを与え、それが資産価格を下落させる。
  • リストラ・プロセスの増加: デフォルトの後始末のため債権者を含む関係者がリストラのプロセスに忙殺される。
  • ロス率の上昇: 一部の投融資に回収率の低いものが発生し、当初の投資判断の不適切さが問われる。

マークス氏は3点目について「低すぎるクーポンのために大きすぎる元本ロスのリスクを取った」事例が見られると指摘する。
長く続く金融緩和の中で超低金利環境が続き、ハイイールド債やレバレッジド・ローンであっても極めて低い利回りのものが増えていたからだ。
こうしたリスク・テイクが適切なものであったのかは、流動性がふんだんに供給されている今はまだわかりにくい。
マークス氏は、ウォーレン・バフェット氏の有名な言葉を引いて危機感をにじませる。

『誰が裸で泳いでいたかは、潮が引いてからでないとわからない。』
誰が悪い投資判断をしていたかは、つらい時期にしかわからない。
10年いい時が続いた。
だから、試されてこなかった。

世界中でイールド・ハンティングが起こる中、フィクスト・インカム市場ではあるトレードオフが起こっていた。
利回りをとるか、コベナンツ(投融資の条件)をとるかのトレードオフだ。
投資難がエスカレートするにつれ、利回りを確保するために緩いコベナンツを受け入れる投資家が増えている。
これが莫大なコベナンツ・ライトのハイイールド債レバレッジド・ローンを生み出している。


マークス氏は、コベナンツ・ライトが市場に及ぼす効果を解説する。
コベナンツ・ライトだからといって、それによって債券・債務が返済不能になるわけではない。
むしろ逆だ。
コベナンツが緩いのだから、テクニカル・デフォルトは減り、デフォルトの発生は少なくなる。
テクニカル・デフォルトがなくなれば、デフォルトとはイコール返済不能のことになる。
ほとんど前触れもないまま、いきなり一番重い災難がやってくることになる。

「今でこそクレジット市場は広く開いているが、もしも次に閉じてしまう時が来て、発行体が返済資金を必要とし、おそらくロール・オーバーしようとするがそれが許されなければ、その時こそが試される時だ。
今は(軽い)コベナンツがデフォルトの数を減らし、将来に先延ばししている。
もしも先延ばしした将来がクレジット・クランチとぶつかってしまえば、デフォルトは増える。
おそらく損失を計上している企業のために長い間先延ばしにしてきたために、そうしなかったよりデフォルトが過酷になるだろう。」

マークス氏は、景気拡大と景気後退では成功の秘訣が異なってくると指摘する。
市場サイクルを極める』で挙げた3つの成功の秘訣:
・積極性
・タイミング
・スキル
について、これまでの景気拡大期・強気相場をこう振り返る。

もしも適切な時期に十分な積極性を持てれば、スキルはそれほど必要ではない。
過去11年間は積極性を持つ適切な時期だった。
だから、過去11年間に積極性を持てた人は、今優れた投資成績を得ているだろう。

右肩上がりの時期には腕は関係なく買ったものが勝つといいたいのだ。
逆に言えば、遠からずやってくるであろう景気後退・弱気相場はスキルなくしてはうまく乗り切れないと言いたいのだ。


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