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債務の長期化は得策ではない:ケネス・ロゴフ
2019年9月16日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、米国の金融・財政政策についてコメントした。
元IMFチーフ・エコノミストにしてチェスの名手の物言いは、とても聡明でゆっくりだが、とても難解だ。


年月が経ち、FRBは経済が過熱していると考えているのに、インフレはどこかに行ってしまった。
FRBが少し利下げしても、インフレが上昇しないだろうことは明らかだ。

ロゴフ教授がFOX Businessで、現在のFRBの胸の内を代弁した。
教授によれば、FRBは中立金利について暗中模索を続けているという。

中立金利とは、経済を熱しも冷ましもしない金利水準のこと。
デジタルに与えられるものではなく、幅をもって推計されるものだ。
確固たる推計法が確立しているわけでもなく、どこが本当の中立金利かは中央銀行でもしかとはわからない。

「近年金利は大幅に低下し、FRBはポジションをとるのに慎重になっている。
現在の状態が続くとは必ずしも考えておらず、ここまで利下げするのがいいこととも必ずしも考えていない。
・・・
一方で、FRBは『(政策)金利とインフレの相関は終わった』とは言いたくない。」

FRBの2つの使命は物価安定と完全雇用だ。
これを金融政策で実現するよう求められており、伝統的に用いられてきたのが政策金利による金融調整だ。
仮に政策金利がインフレに作用しないのなら、FRBの使命に物価安定を残す意味はないかもしれない。
しかし、それは確立された事実ではない。

「利下げはできるが、突然FRBが愚か者に見えるようになるかもしれない。
利下げはするが、データを注視し続けるだろう。」

FRBはゆっくりと利下げし、インフレ昂進が起こらないかビクビクし続けるとの予想だろう。

ロゴフ教授は、イールド・カーブ長短逆転が景気後退を示しているとの見方には懐疑的だ。
教授によれば、金利とは世界全体で決まるものだからだ。

「諸外国では景気後退の可能性がある。
現在は、初の、米国は景気後退でない、長期的な世界的景気後退なのかもしれない。
(米)長期金利はそれを反映しているのだろう。」

諸外国の景気後退が諸外国の長期金利を押し下げた。
その低い長期金利が米国の長期金利を押し下げているという考え方である。
これは国内景気とは一線を画す見方だ。
安い諸外国のマネーが国境を越えて米国に流入し、米金利、しかも長期金利・超長期金利までも押し下げている。
これをチャンスとばかり、ゴールドマン・サックス出身のムニューチン財務長官は50年債発行の意向を示唆している。

しかし、ロゴフ教授は、これについてあまりいい考えではないとコメントした。

「金利はとても低く、双方向に可能性があるとは見えない。・・・
いつリファイナンスをすべきかという問題なら、デュレーションを伸ばすべきだ。」

現在、長い金利が極めて安く見えること、債務の長期化が資金調達の安定につながることはロゴフ教授も重々承知している。
一方で、短期金利が安ければ債務を短期化し、超長期金利が安くなると長期化するようなやり方には苦言を呈する。
投資家がつけばいいという話は本質的な問題ではないという。
では、ロゴフ教授の論点とは何なのか。

「コストはともなうが、保険をかけておくべきなんだ。
金利が上昇しても米国はデフォルトはしない。
しかし、早めの修正を迫られる。」

長すぎないデュレーションで波のないリファイナンスを行うことで、政府は市場が告げる声に耳を傾けざるをえなくなるという趣旨だ。
これが保険となって、財政規律を守る一助となりうると暗示しているのだ。

金利が今のように低い時には正常とは何かを調整しないといけない。
一方で、今のような低金利が永遠に続くとは限らない。
それに対する保険をかけておくことが大切なんだ。


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