投資

債券・現金以外すべてが20%上昇する:ジェレミー・シーゲル
2021年5月15日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、マネタリストらしいインフレ昂進論を展開し、そして結論はいつものとおりブル、ブル、ブルだ。


前例のない金融拡張、前例のない財政による支援策について私は過剰と考えており、それが最初に金融市場・株式市場への(資金)流入になる。
一たび(経済)再開となると、今がその変わり目だが・・・それが爆発してインフレを起こす。

シーゲル教授が、従前どおりインフレ予想を続けている。
教授は昨年のパンデミック以降、一貫して金融・財政政策がインフレの引き金を引くと予想してきた。

ジェローム・パウエルは私が見てきた中で最もハト派のFRB議長だ。
とても明らかなインフレに対しても行動せず、インフレはさらに高まるだろう。
将来的には問題だろうが、しばらくの間はマネーが流入してくるので、株式はまだ上昇するだろう。

米市場にはインフレを心配する声が少なくない。
インフレを示すニュースが出ると、FRBの金融政策正常化の早期化を意識し、株価が下げるのはその表れだ。
しかし、シーゲル教授の見方は時間軸で見て少し異なる。
FRBがテイパリングや利上げに動くには時間がかかり、一方で経済再開が景気を刺激するため、当面は株式市場の上昇が続くというものだ。

今から1年あまり前のパンデミック開始以来、マネーサプライはほぼ30%も増加した。
このお金は消えることがない。・・・
すべてが向かうのではないから、30%のインフレが起こるわけではない。
しかし、私は、このマネーサプライの増加により、今後2-3年で軽く20%のインフレがあると予想している。

お金が「消えることがない」とは、パンデミック後の特異な状況に言及したものだ。
今回の政策対応は単なる量的緩和ではない。
量的緩和は、煎じ詰めれば、国と中央銀行が国債と政府預金を交換する営みであり、基本的に経済に何か物理的な働きかけを行うものではない。
しかし、パンデミック後の政策対応は、量的緩和も異例の規模なら、財政政策も異例の規模だ。
お金は政府預金から出て、家計・企業の銀行口座に移っている。
しかも、モノを買おうが株を買おうが、そのお金は所有者を変えるだけで、消えることはない。
単なる量的緩和とは異なる挙動が起こりうる。
これを変え得るのは、金融・財政政策が引き締めに転じ、民間の資金を政府・中央銀行が吸収する場合だ。

かつてシカゴ大学でミルトン・フリードマンの下で働いたこともあるシーゲル教授は、インフレについてマネタリストらしい考え方をする。
ただし、貨幣の流通速度が若干下がりうる点は認めているようだ。
この点こそ現在戦われている《インフレか否か》の議論の要点の1つになっている。
ディスインフレを予想する人たちは、マネーサプライの増加がインフレを生まず、流通速度の低下によってオフセットされてしまうと論じる。
確たる答は、現実の推移を待つしかないだろう。

一方で、投資の観点でいえば、CPIやPPIなど実体経済におけるインフレとは異なる視点が存在する。
リチャード・ヴェルナー教授は、お金が向かう先は実体経済以外にも資産市場があり、資産売買に向かうほど従来の流通速度が低下すると説明した。
つまり、システムを一枚岩と見るより、実体経済・金融経済に分けて考える必要があるということだ。
全体のマネーサプライが増えても、実体経済に向かう部分が少なければ、CPIやPPIはさほど上昇しない。
一方で、金融経済にはお金の貸借について実体経済のような制約(つまり生活や商売に必要な分しか使わない)はないから、お金は自由自在に飛び回る。
ある意味、実体経済と金融経済では流通するお金も流通速度も異なり、それがCPI・PPIでのディスインフレ、資産価格でのインフレという差を生み出しているのだ。

シーゲル教授は、従前どおり株式が実物資産からのキャッシュフローの裏付けのある資産だとして強気を継続している。

株式は実物資産だ。・・・
お金はそこに流れていく。
もちろん、不動産、インフレ・ヘッジ、そしてすべてが20%上昇する。
このお金は消えてなくなることはない。

シーゲル教授は、従前どおり債券・現金を最悪の投資先と話した。
また、最近の変化として、いつか強気相場に動揺が走ると話すようになっている。
「今後1年」でFRBがインフレを抑制するスタンスに変化し、そこで市場が動揺すると予想している。
教授は、米国債の実質利回りがマイナスである中で、唯一の守りの方法として配当株を挙げた。

歴史を振り返ると、株式はインフレを補償する以上のパフォーマンスを上げる。
多くの配当株の配当利回りは2、3、4、5%だ。
フィクストインカムに投資する理由はない。・・・
将来FRBが引き締めるとの恐怖が実現するだろうにもかかわらずお金が株式市場に向かう理由だ。

シーゲル教授の主張はとても力強い。
ただ1つ気になるのは(短期)米国債や現金を最悪としていいのかだ。
これらは価格にフロアのある資産クラスであり、ブラックロックなど、その点を重視する投資家も少なくないことには留意すべきだろう。


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