海外経済 政治

借金はその使い道が大切:ローレンス・サマーズ
2020年5月25日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、米債務問題の評価のしかた、財政政策について持論を展開している。


債務に関する最も深い真実とは、何に使うかがわからない限り借入(の是非)を評価できないということだ。
借入コストを超えるリターンが得られ、債務返済を超えて残金を与えてくれるやり方で借入・投資を行うなら、概して良い持続可能なものといえる。
費消のために借り入れ、債務返済をカバーするリターンが残らないなら、概して持続不可能で問題といえる。

サマーズ氏がThe American Interestインタビューで、債務問題についての考え方を解説した。
借入の面だけを見るのでなく、そのお金がどう使われ、どう回収されるかまで勘案して是非を判断すべきとの指摘だ。
確かに同氏のいう「良い持続可能な」借金・支出ならば、政府の財政は悪化しないことになる。

では、「良い持続可能な」財政政策のみへの限定を担保するのは何なのだろう。
どうやったら、財政悪化をもたらさない財政政策を貫けるのか。
日本人に言われたくはないだろうが、米国もこの20年以上財政を悪化させてきた国だ。
米国は議会予算局という独立財政機関を有しているが、それでも財政は悪化してきた。
(日本に至っては、独立財政機関を求める声は少なくないが、存在すらしていない。)
これが万国共通の政治の難しさだろう。
ルールは筋だっていても、現実になるとおかしなことがおこりうる。
(だからといって、理想を簡単にあきらめてよいという話でもない。)

サマーズ氏は、債務問題に対して単純な物差しは十分でないと主張する。

だから、私たちは、債務の分岐点(原文は閾値)について語る傾向を乗り越えなければいけない。
同様に認識しなければいけないのは、債務(対GDP)比率を見ることが重要であるように、デット・サービス・レシオを見ることも重要であることだ。
例えば、日本は極めて高い債務比率だが、極めて低いデット・サービス・レシオであり、長い間金利に対して市場による大きな上昇圧力を受けていない。

国家のデット・サービス・レシオといえば通常は債務を輸出で除した比率だ。
日本は米国より金利が低く輸出の比重も大きいから、小さくなる。
日本の債務対GDP比率が高いわりに問題に発展しない理由を示唆したものだろうが、これが米国に対してどういう意味があるのかは理解しがたい。
この流れだと、相対的にデット・サービス・レシオが高い米国には脆弱性もあるとのインプリケーションになってしまう。

ともあれ、サマーズ氏は米政府に対して財政拡大を求めている。
政府の果たす役割を増やすべきとし、課税拡大や(環境分野ほかの)インフラ整備を提案している。
歳出の拡大だけでなく歳入の拡大も求めているところが共和党とは異なる。

これらが私たちの主たる目的であって、債務について特別の基準を満たすことではない。
私たちは、自国が発行する通貨建てで30年1.3-1.4%の金利で借りられる瞬間を大きなチャンスと考えるべきだ。
そして、米社会を刷新し立て直すためにそのチャンスを利用するのが私たちの責務なのだ。

「瞬間」(a moment)というワーディングが印象的だ。
金利が安いうちにお金を借りて実のあることをしようという提案だ。
この正しい戦略論が正しく実行される時は来るだろうか。
(もしも正しく実行されるなら、米財政はそれによって改善することになる。)
こうした話を聞いていると、米国の日本化がどうにも避けがたいように見えてくる。
不幸中の幸いは、仮に日本化するなら、今1.3-1.4%と低い調達コストが、この先(予想に反して)さらに低下してくれるかもしれないということだ。


-海外経済, 政治
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。