供給ショックの中身を見ろ:ヌリエル・ルービニ

世界金融危機を予想し《終末博士》とも呼ばれるヌリエル・ルービニ ニューヨーク大学教授が、今回も真っ暗な将来を語っている。


為政者がゾンビ企業・銀行・政府機関を清算するような一連の『創造的破壊』を容認すると考えるのは世間知らずすぎる。
・・・何かあれば、次の停滞期にはこれまで見てきたよりさらに『ばかげた』非伝統的政策が採用されるだろう。
・・・様々なイデオロギーの人たちが、同じことをいい出している。
次の停滞期、莫大な財政赤字を半永久的にマネタイズすることが不可避であり、むしろ望ましいという。

ルービニ教授がProject Syndicateで危機感を滲ませている。
金融・財政政策を協調させるという考えについては、様々な名前で様々な亜種が提唱されている。
すでに財政が良くない国が、通貨発行の助けによって更なる財政出動を行おうというコンセプトだ。
ルービニ教授がこうした手法に対して否定的なのは書きぶりからも明らかだ。
もっとも、ほんの10年余り前までは、こうした手法は禁じ手とされるようなものだった。
それが「非伝統的政策」として採用され、今では市民権、しかも永住権を得つつある。

ルービニ教授は、次の景気後退期について心配する。
こうした政策が果たして有効だろうか。
教授は、リーマン危機時にはQEなどの政策が危機対応として有効だったと認めている。
ルービニ教授が心配するのは、一時的な危機対応でなくなる場合のようだ。


では、次の景気後退が、スタグフレーション(低成長とインフレ上昇)を生むような継続的なマイナスの供給ショックによって引き起こされる場合はどうだろう?

一次的な供給ショックなら、危機対応策を講じることで乗り切ることができるかもしれない。
しかし、供給ショックが継続するものならどうなのかと問うているのだ。
ルービニ教授は、こうした供給ショックの例として米中貿易摩擦、Brexit、くすぶる原油高懸念を挙げている。
拡張的な財政・金融政策は、こうした継続的なマイナスの供給ショックへの対応策としては適切でないと主張している。

「1970年代の石油ショックへの拡張的政策での対応は2桁のインフレと急激で危険な公的債務の増加を招いた。
さらに、停滞により企業・銀行・公的機関の中に流動性を減らすだけでなく支払能力を失うものが出るなら、それらを温存する意味はない。
この場合『ゾンビ化』を引き起こす救済ではなく、債権者のベイル・イン(債務リストラと消却)の方が適切だ。」

久しぶりに聞かれる「ベイル・イン」という言葉。
前回の金融危機で盛んに議論されたテーマだ。
長い目で見ればベイル・インで責任を明確にすべきところを、前回の危機は過酷すぎて多くがベイル・アウトとなった。
ベイル・アウトは事態を収拾するための応急処置としては有効だが、病根を温存するようなところがある。

ルービニ教授は、対応する供給ショックの性質にあった対応策を選ぶべきと説く。
しかし、それでも問題は残るだろう。

問題は、長期的に見てそれが良いことより害を及ぼさないかだ。


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