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何事も名目の金額で判断してはいけない:レイ・ダリオ
2021年12月20日

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏は、現在のインフレ上昇が超長期の債務サイクルで起こる通常のプロセスだとし、貨幣錯覚に囚われないよう注意を促している。


お金や信用の形で生み出される購買力が、財・サービス・金融資産の増分より多く生み出されると、金融資産の価格を押し上げる。
貨幣増発、債務の貨幣化は、超長期の債務サイクルの最終局面だ。

ダリオ氏が新著『Principles for Dealing with the Changing World Order』に関するYahoo Financeによるインタビューで、現在のインフレや資産インフレを長い歴史の文脈の中で捉えなおしている。
長いサイクルの1局面だから、ほとんどの人にとっては初めての経験だ。
しかし、新著において経済・政治・国際関係のサイクルを回顧したダリオ氏にとっては現在もまた歴史の典型的な1局面にすぎないという。

投資家の視点、個人の視点に立てば、単にお金や信用を生み出すだけでは生活水準を高めることができないことを肝に銘じるべきだ。
特に、それより速く生産性が上昇しない時はそうだ。
それが資産価格上昇を意味している。

生産が増えないのにお金ばかりが増える。
蒙昧な庶民はバラマキを喜ぶかもしれないが、そもそもお金の使い道であるはずの財・サービスが増えていないなら(全体としては)お金が増えても豊かになったとはいえない。
このアンバランスが引き起こすのがインフレであり、余った莫大なお金が資産市場に向かい資産インフレを引き起こす。

では、貨幣増発をやめれば社会は良くなるのか。
ダリオ氏は自身の価値観を極力議論に反映させない。
貨幣増発をやめるべきか、あるいは金融政策を正常化させるべきかは、貧富や左右による国の分断とトレードオフの関係にあると話している。
貨幣増発に問題があることは間違いないが、それをやめれば格差や再配分の状況が悪化することも考慮すべきという。

ダリオ氏は、この文脈の中で珍しく短期的なマクロ見通しを漏らしている。

これら購買力の多くが、特に来年にかけて後退するだろう。
それでもまだ大きく、それらの資産のインフレ水準は高いままだろう。

ダリオ氏は最後にビットコインなど暗号資産についても質問されている。
同氏はいつものように否定的ではないが抑制的な返事をしている:

  • 多くは保有していない。
  • お金が減価する中での代替的なお金と考えている。
  • ポートフォリオの小さな部分。

ダリオ氏の関心は「代替的なお金」ではなく伝統的なお金の方にある。
現金は今年4-5%減価し購買力を失ったとし「最悪の投資」と言い切っている。

投資家に1つ言いたいのは、何事も名目ベース、ドル金額で判断してはいけないということだ。
インフレ調整後のドル価格で見ないといけない。

たとえば、仮にインフレを5%とすれば、今年のドル現金のリターンは-5%。
米国株が名目で23%上昇したとすれば、実質で18%上昇となる。
日本株が名目で10%上昇したとすれば、(日本は物価が上がっていないので)実質も似たような水準だ。
もちろん米国株の方が上昇率ははるかに大きいが、差の大きさへの印象は名目(13%p)と実質(8%p)で大きく異なる。

実質ベースで見るべきとの話は、長い目で見れば為替の影響を加味すべきという話と似たものになる。
自国通貨安で多少株高になったからといって本当に喜べるのかどうか、きちんと検証してみるべきだ。
ほとんどの人は自国通貨建ての資産・収入が多いだろうから、多少の外国資産が換算上増価したからといって、自国通貨安の悪影響の方が大きいのではないか。
ましてや自国通貨を数十%減価させてGDPが数%上昇したと胸を張る政府は問題外だ。

ダリオ氏は最後にいつものアドバイスをしている。
史上最高のヘッジファンドとされるブリッジウォーターの原典だ。

さらにその上重要なのはポートフォリオをうまく分散することだ。


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