佐々木融氏:日本発のリスク・シナリオ

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JP Morganの佐々木融氏が、従前の円高ドル安予想を微調整した。
ドル円は115円台でピークを打ち、年末にかけて110円を割り込むと予想した。


「欧米の債券投資における日本の機関投資家の存在感は大きい。」

佐々木氏は東洋経済のインタビューでこう語った。
欧米が金融政策の転換を急いでいるように見える中、日本では相対的には金融緩和が継続している。
日本の投資家は運用難に苦しみ、欧米債券の利回りがわずかでも上昇すれば買いを入れる。
これが欧米での金利上昇を抑え込んでいる。
結果、ドル高・ユーロ高・円安の流れが進みにくい。

FRBバランスシート縮小の影響は軽微

「バランスシート縮小はあまり相場に影響しないと思っている。
まず、基本的に、FRBの政策は先にマーケットに織り込まれてしまう。」

佐々木氏は、往々にして市場は金融政策の先を行くと言う。
バランスシート縮小で金利が上昇するなら、昨今の金利上昇がそうだったと指摘する。
Sell the rumor, buy the fact.が起こることを示唆している。

バランスシート縮小を急ぐ背景

佐々木氏は、FF金利先物が2018年末までに2回の利上げを織り込んでいる点を挙げ、最近の日米金利差とドル円の相関から約114円にあたると指摘。
あと1回さらに利上げがあれば約117円にあたると説明した。
実際にあと1回の利上げが起こるかどうかはインフレの動向によるという。

「インフレ率が上がらない一方で、景気はそこそこいいことから、FRBはバランスシート縮小のほうを先に進めてしまおうと考える可能性がある。
そもそもインフレ率が上がらない中で急いで利上げをする必要はない。」

インフレが上がりにくい要因は賃金上昇の鈍さやITによる合理化だ。
「労働人口が高齢者から若者へと替わっていき、全体の平均賃金が下がって」いるほか、「パートタイムが増えている」ため、賃金が上がりにくい。
こうした状況は金融政策で対応すべきものではないし、また不可能だろう。
佐々木氏は危機感をにじませる。

「金融政策ではどうにもならないことが起きているのではないか。
世界経済には何か大きな変化が起きていて、これまでの常識的な金融政策の範疇から考え出されている量的緩和とか、イールドカーブ・コントロールといったたぐいの政策では影響が限られてしまうのではないか。」

こうした問題は金融政策だけでなく財政政策の範疇も外れているだろう。
さらに言えば、従来の構造改革・成長戦略で解決可能なものとも思えない。
こうしたことに現状政治は無知・無策だ。

(次ページ: ドル、ユーロ、新興国通貨の見通し)