低金利が生み出す危機:マーク・モビアス

新興国市場投資の大ベテランMark Mobius氏が、米国債・米国株・金・暗号資産・新興国市場・金融政策など広範なテーマについて話している。
世界の金融政策は経済・市場の機能を麻痺させ、危機を生み出す可能性があると警告している。


これから買う人は、金利低下の中で債券ではないだろう。
すでに保有しているならいい状況だ。
しかし、投資しておくべき場所は株式だろう。

モビアス氏がBloombergで話した。
同氏の発言からは、金利低下もそろそろ底に近いとの前提が見て取れる。
金利低下は債券価格を上昇させ、保有者にキャピタル・ゲインを与えるが、それも終わりつつあるとの読みだ。
金利が底を打てば、金利はよくて横ばい、悪くすれば上昇に転じる。
そうなれば、底で買った投資家は低リターンをフィックスされてしまう(≒キャピタル・ロスを被る)ことになる。
だから、債券でなく株式という話になる。

米長期金利は上昇に転じるのか。
多くの投資家は(時期はどうあれ)そうなると予想しているのだろう。
短期のFF金利が引き下げられるとしても、米長期金利が2%程度でとどまるとは考えにくいからだ。
米潜在成長率が2%弱、インフレが2%弱とすれば、名目長期金利は4%弱でもおかしくない。

一方、米経済が日本化するならば、ここから一段の長期金利低下があってもおかしくない。
そのシナリオは現状リスク・シナリオにすぎないが、もしもこちらが実現すれば大きなサプライズになる。

モビアス氏は債券・株式の話をした後、唐突に金について話し出した。

「銀行に預けても低金利でほとんど金利がつかないなら、いくらか金を保有する意味があるし、それが起こりつつある。
さらに、ロシアなどの中央銀行が金を買い増している。」

低金利が続く中、金利の付かない資産クラスが不利でなくなっている。
モビアス氏は、暗号資産の最近の急騰も引きつつ投資家の心理を解説し、自身の結論を述べた。

あまりある流動性を目の当たりにし、人々は『通貨とは何か? 何を買うべきか?』思い迷っている。
だから、投資すべきは株式だと考えている。
配当もあるし、インフレに対応する企業収益もある。

先日ビットコインは存続すると話し注目されたモビアス氏は、この日も暗号資産に対して意見を求められている。


「私は買わないが、(暗号資産は)留意すべきものであることは理解すべきだ。
買わない理由は、何が本当の価値なのかわからないからだ。
これほど広く保有され受け入れられていなければ、異なるものになっているだろう。
すべての通貨は信頼に基づいている。・・・
しかし、暗号資産の問題は、多くの違法行為を除いて広く使われていないことだ。」

新興国市場のリスクを果敢に取りに行った老投資家も、暗号資産のリスクについてはまだ取るべき時にないと考えているのだ。
しかし、先日の発言同様、モビアス氏は決して狭量な考えに終始しているわけではない。

「ついに、たくさんの人が信じ、成長を続けていくならば、その時は私も買って参入しなければいけないかもしれない。」

モビアス氏の発言には暗号資産が市民権を得る課題が2つ含まれている。
違法行為に悪用されるのを防ぐこと。
その上で、決済手段として普及すること。
しかし、そのためには価値の変動が十分に小さくなる必要があろう。
皮肉なことに、暗号資産が成功するには投機対象とならないような値動きが必要となる。
つまり、今日の暗号資産と将来の暗号資産は大きく姿が異なるのだろう。

モビアス氏は、世界中で実施されてきた金融緩和がバブル的な現象を引き起こしたり、新興国市場を含む国々で財政規律を弛緩させたのではないかとの問いにも厳しい返答をしている。

「このすべての状況に対応する上で、世界中の中央銀行はむしろ無責任だ。」

モビアス氏は、中央銀行が経済・市場のリスクを高めている一因が彼らの見ている変数にあると考えている。

「彼らはインフレ率を見て、系の流動性をどうするか決めるものと信じている。
しかし、インフレ率は多くを語ってくれない。
生産性は上昇し、製品は5年前の半分の価格で売れるよう製造される。
実質的にデフレ的な環境なのに、中央銀行は系にマネーを送り込んでインフレを生み出そうとしている。」

構造的にインフレになりにくいのに、何が何でもインフレにこだわり続けるため、他の部分に歪みがたまってしまう。
金利がここまで長くここまで低くなければ、資産市場も財政も市場原理による修正が効いたかもしれないのに、それが起こらない。

モビアス氏は将来を危ぶんでいる。

利下げの連続によって市場は本来あるべき金利を決める状況になくなった。
私たちはとても混乱した状況にある。
これが本当の危機を生む可能性がある。

新興国通貨にかかわるキャリー・トレード(FX)の可能性について尋ねられると、モビアス氏はその危険性に言及しつつ、リスクを取りたい投資家にアイデアを与えている。

「もしもチャンスを狙うなら、たぶん南ア・ランド/円またはユーロ、または、ブラジル・レアルだろう。
しかし、これは極めて投機的なものだ。」

モビアス氏の関心はこうした短期的なところにはないようだ。
新興国市場は短期的な見通しが良好とはいえないものの、長期的には有望と話した。


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