ハワード・マークス

 

低リターン時代の6つの投資法:ハワード・マークス

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏が、低リターン時代の6つの投資法を説いている。
そのうちの1つ、投資のアルファの獲得法について論じている。


低リターンの世界で、どう投資すればいいか。
6つの可能性がある。・・・
重要なのは、これら選択肢のどれも完全に満足のいくものでないということだ。

マークス氏がある講演会で、低リターン時代の投資について話をした。
さすが極めて理にかなった現実的な講演内容だ。
ただひたすらに投資を煽るようなものとは真逆のスタンスだ。

では、マークス氏が考える投資法とは何なのか。

  1. 従来同様の投資を行い、過去同様のリターンを上げる
    「これはフェイクの選択肢だ。」
  2. 従来同様の投資を行い、今の低リターンで妥協する
    「より現実的だ。・・・事業計画と合致しないだろう。」
  3. リスク・テイクを減らし、さらに低いリターンで我慢する
    「もっと面白くない。」
  4. すべてキャッシュにして、ゼロ近いリターンで我慢する
    「実を結ぶまで2年かかれば・・・深い穴に落ちて二度と出られなくなる。
    失業してショベルさえ持てなくなる。」
  5. リスク・テイクを増やし、従来同様のリターンを狙う
  6. 特殊なニッチ市場に優秀な運用者が投資する
    「運用者のリスクを取ることになる。」

このうち2から5についてはリスク予算をどうとるかだけの問題であり、リスクとリターンのトレードオフ上でのメニューにすぎない。
マークス氏が次に話したかったのは、トレードオフを上回るリターン、つまり投資のアルファを取れるのかであった。
しかし、そこにはほとんどの投資家が知っている効率的市場仮説が立ちはだかる。


「ミスプライスなど存在せず、それを見出す技術も存在しない。
これが示すのは、投資家は市場を負かすことはできない、ということだ。」

つまり、この仮説は持続的なアルファ獲得などありえないと言っているのである。
しかし、もちろん効率的市場仮説は絶対というにはほど遠い。
だからこそ「仮説」なのだ。
では、市場の非効率性はどの程度存在するものなのか。

マークス氏は質疑の中で2つの非効率性の概念を説明した。
1つ目は「構造的非効率性」だ。

「知らない、理解していない、買おうとしない、職業上の受託者責任と考えないなどが非効率性を生む。
私が『構造的非効率性』と呼んでいるものであるが、今日では無視できる程度だ。
・・・40、50年前には世界はばかげたところだったんだ。
誰も何も知らなかった。」

情報化の時代、投資にかかわる様々な考え・データは瞬時に業界で共有されるようになった。
このため「構造的非効率性」はほぼ消滅したのである。
これは、この観点からアルファを生み出すチャンスがほぼ存在しないことを表している。
しかし、それでもマークス氏はアルファの探求をあきらめない。
もう1つ非効率性の源泉があると考えるからだ。

構造的非効率性を見出すのは困難だが、時として循環的な非効率性が生じることがある。
時として人々は客観性を失い、過小に資産を値付けする。
その場合、心理的誤りに抗することができるなら安く買うことができる。

大切なのは、みんなが正気を失っている時、自分だけが正気を保つことなのだ。
そして、みんなが正気を失う時とは、市場急落・景気後退のタイミングと言いたいのだ。
つまりブームの絶頂と弱気の底である。
なるほど投資とは心理戦だ。


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