
伊藤隆敏教授が予想する出口の順序と時期
伊藤隆敏コロンビア大学教授がテレビ東京の番組に出演し、日銀の出口戦略について予想した。
次期日銀総裁候補の筆頭に挙げられる伊藤教授の発言だけに、大いに注目したい。
ECBより日銀が先にやっていたんだ。
伊藤教授は、いわゆるステルス・テーパリングについてこう語った。
昨年9月、日銀は「総括的な検証」を行い、マネタリー・ベース目標を後退させた。
代わりに、日銀当座預金付利と長期金利の操作によるイールド・カーブ・コントロール(YCC)を導入した。
年間80兆円の国債買入れは目途として残ったが、実際にはそれを大きく下回るペース(60兆円以下)で推移している。
いつか日銀のバランスシート拡大は止まる
「(買入れ額が)減ってきてもゼロ近傍が維持されていれば何の問題もない。」
伊藤教授には、量へのこだわりは見られない。
実際、ステルス・テーパリングは多くの人から歓迎されている。
日銀の量的緩和はFRB・ECBと比べても規模・内容が強烈で、無駄に買入れしているのではないかとの懸念さえあった。
先々のことを考えれば、必要な結果を得るために必要最小限の買入れに抑えたい。
マネタリー・ベース拡大がインフレを上昇させるという幻想を捨てたことで、日銀が残すマージンはやや大きくなったのだ。
このままステルス・テーパリングが続けば、日銀のバランスシート拡大が止まる時がやってくると伊藤教授は言う。
すると、次の段階は金融政策の正常化という話になる。
データ次第で長期金利ターゲット引き上げへ
この1年、長期金利ターゲット0%がうまくコントロールされてきた点について、伊藤教授は含みのある言い方をした。
「いまのところ。」
伊藤教授は、長期金利ターゲットをどこに置くかは「データ次第」だと言う。
「景気・インフレ率・為替の状況を総合的に勘案して、大丈夫だとなれば0.1%を超えても構わないとう状況が生まれるかもしれない。その時には、0.0%を0.1%にするのではなく、解釈の幅を拡げれば0.2%程度まで行っても問題ないと思う。
あるいは、正面切って上げていく(0.0%ではないと言う)かだ。」
(次ページ: 日銀の出口戦略はこうなる)