ジョセフ・スティグリッツ教授が、コロナ・ショックが暴いた米国の病巣と企業救済策についてコメントした。
米国についてとても特徴的なのは、GDP(予想)の変化に対して失業の数字がとても悪化していることだ。
他国、英国やデンマークは、米国と同様に深刻な経済停滞を、米国が直面するような失業率上昇なしに切り抜けている。
スティグリッツ教授が、IMF World Economic Outlookから読み取れる米社会の病巣を指摘した。
教授は、米国が他の先進国と比べて、際立って健康の格差が大きい国だと指摘する。
明言こそしなかったが、原因が医療保険制度や所得格差にあるのは明らかだ。
国民に十分な医療保険が与えられない、低所得者層の健康への意識が薄いなど、よく言われる原因はいくつもある。
「コロナウィルスのいくつかの側面は、特に既往症・・・健康に問題のある人につらく当たる。・・・
(健康格差は)所得格差と同等か、それより悪く、パンデミックがそれを白日の下にさらした。」
スティグリッツ教授は、みんなが日々奉仕を受けている職業、例えば配達人、看護師らの給与・処遇が悪い点を言い添えている。
スティグリッツ教授は、政府・FRBの対応策について、リーマン危機時と似た傾向が生まれつつあるという。
企業と銀行がアップサイドをとり、納税者がダウンサイドをとる傾向だ。
「ある意味、企業の多くは2017年12月に巨額な減税によって助けられた。
彼らは、雨の日に危機への耐性を強めてくれる資本バッファーを設けるためにそのお金を使わなかった。
かわりに、CEOやノルマへの報酬に使ってしまった。
残りのお金は自社株買いを行い、2018年だけで1兆ドル近くにも上った。」
スティグリッツ教授は、救済が引き起こす一種のモラル・ハザードを問題視しているのだ。
教授は、こうした企業に対して慈悲深くはなれないとして、政府からの支援を疑問視している。
もっとも、支援をしなければ他のところに負担が寄ってしまうのも事実。
スティグリッツ教授は、支援のやり方を工夫するよう注文を付けている。
政府が大きなアップサイドを確保することが必須だ。
ワラントを受け取るとかして、経済回復とともに何らかの方法でアップサイドを得らえるようにすべきだ。
そうして、彼らが今経験しているダウンサイドだけを引き受けることがないようにしないといけない。