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ハワード・マークス 今日の投資における大きな誤り:ハワード・マークス
2021年3月25日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏に対するReal Visionでの対談(2月5日収録)の全体が公表されたので、同氏の大局観についての部分を紹介しよう。


正常(な金利)って何?
22%が正常? 2%が正常? 6%が正常?
1978年に株式調査からハイイールド債に配転され資金運用を始めた時、短期金利、Tビルは9%だった。

対談の相手である投資家が語った、正常とは思えない超低金利下での長期投資に対するとまどいの言葉を聞いて、マークス氏が答えた。
確かに投資家の多くが金利の正常化を望んでいるものの、何が正常なのかは誰にもわからないとの趣旨だ。
そう断りを入れた上で、それでも言えることがあるという。

今日の大きな間違いは、成長と収益性について楽観的な仮定を設け、しかも今日の低い割引率を適用することだ。
これは大惨事になる。
真逆のこともやりたくない。
とても厳しい仮定を設け、9%、6%の割引率を使いたくもない。

株式のように(ゴーイング・コンサーンを仮定する限り)永遠に続くキャッシュフローを想定する資産では、理論価格は永続的キャッシュフローの割引価値となる。
もちろん、遠い将来になるに従い、長い年月で割り引かれ、現在価値は小さくなっていく。
しかし、昨今の超低金利では、その減衰度合いも随分と緩やかになっている。
現在の超低金利をもちいて、楽観的なキャッシュフローを割り引いてよいのか。
遠い将来に経済が正常化するなら、それに見合う割引率を勘案すべきではないか。
理屈を知る投資家なら誰しも疑問を感じるところだろう。

マークス氏が上述の「大きな間違い」を指摘したのは、理論的な不整合だけが理由ではないようだ。
そこには、同氏の相場観も含まれているようだ。

「みんなが同じ考えなのは、金利が上がることはあっても、下がることはないということだろう。
FF金利は0%で、FRBは繰り返しマイナス金利を否定している。
すべての資産価格を引き上げてきた40年にわたる金利低下の追い風が終わりつつあることにはみんな同意するだろう。」

もっとも、近年までの日欧の政策を見るなら、さらに米金利が低下する可能性も皆無ではないように思える。
しかし、マークス氏はその可能性が小さいと考えている。
強力な財政・金融政策の継続には大きなリスクがともなうためだ。

「私たちは長期的な影響について心配している: インフレ、ドルの価値、ドルの信用、世界におけるドルの受入れ可能性への影響だ。
無制限な貨幣増発なしに、毎年1兆ドルの財政赤字を続けることはできない、というのが答だ。」

ならば、赤字国債を中央銀行が買い続ければいいという暴論も出てくる。
マークス氏の議論はMMTに及ぶ。

「問題は、貨幣をコントロールし続けられるか、無制限に貨幣増発できるか、永遠に世界の準備通貨でいられるか、だ。
私はそう思わない。」

さらに、積極財政の本丸、ケインジアンへの不満を漏らした。

「100年前、ケインズの前までは、財政赤字はタブーだった。
ケインズは、(経済が)弱い時には雇用を創出し経済を浮揚させるために財政赤字にしろと言った。
でも(経済が)盛況な時には、財政黒字にして(借金を)返済しろと言った。
みんな前半だけ使い、誰も後半を心配しなくなった。」

マークス氏は、現在のような状況が持続しうるだろうかと自問する。
仮に「永遠」でなくとも、たとえば「3-5年」でも悪影響なしに続きうるのか?
とても信じがたいと結論している。
その一方で、過去の政策の妥当性を否定するわけではない。

投資ビジネスのすばらしいところは、必ず別の面が存在することだ。
FRB、財務省、世界の他の中央銀行がやったことをやっていなければ、世界不況にに向かっていたと信じている。
だから、私は悪い影響を生じる可能性があると信じるが、とにかくやらざるをえなかったんだ。

各国が異例の財政・金融政策を講じることは(中身の議論はあれど)正しかったし、不可避だった。
それが、なぜ「投資ビジネスのすばらしいところ」なのか。
どんなに問題を抱えていようが、不可避な政策は今後も続く。
どんなに問題があろうが、その国で最も大きなクジラが(識見のある者にとって)見え見えの方向に動く。
これは投資にとっては大きなチャンスなのだろう。


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