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今回は違う理由:ジェレミー・シーゲル
2020年6月23日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、株高、来年の経済ブーム、インフレを予想する理由をマネタリストらしい観点から解説している。


私のバックグラウンドは経済学でのPhDで、貨幣理論と金融政策を専攻した。
後に興味があってファイナンスにいったが、教育を受けたのはマネー、債務、FRBの行動ほかだ。

シーゲル教授がBloombergの長時間インタビューで、MITでの博士課程での専攻を話した。
教授がコロナ・ショックに入っても強気を続けていたのは、単に《永遠のブル》であるからではなかった。
金融政策やマネー増大は教授のツボだったのだろう。

シーゲル教授は(テイラー・ルールで有名な)ジョン・テイラーらが非伝統的金融政策を批判する書簡をベン・バーナンキFRB議長(当時)に送った時、書簡に名を連ねるのを断ったのだという。

「どうして署名しないのかというから、QEは・・・超過準備が増えるだけと答えた。
マネー・サプライは少しは増えるだろうが、それだけだ。」

中央銀行が銀行から例えば国債を買い入れた場合、中央銀行に国債が、銀行に準備預金残高が渡るだけだ。
これだけでは何も起こらない。
銀行が準備預金を用いてお金を貸して初めて、その資金は市中に回り始める。
(その資金は結局はどこかの銀行を通して準備預金として戻ってくる。)
それが起こらないなら、量的緩和が及ぼす効果は極めて限定的になる。

今回は違う

シーゲル教授は、貸出が伸びなかったリーマン危機後と今回では大きく異なると指摘する。

今回の大きな違いは、FRBバランスシートの大幅拡大のみでなく、もっと重要なのが、このお金がチェック口座、決済口座、給与口座、個人・企業の銀行口座に入っていることだ。
こんなの見たことがない。

コロナ・ショックでは、莫大な金額が給付金として国民に配られた。
また、銀行が信用供与するのでなく、政府保証のもとにFRBがSPEを経由して企業等に資金を貸し出している。
銀行が貸すか貸さないかは関係なく、企業・個人の銀行口座にお金が届いている。
これは、決定的な違いだ。
だから、シーゲル教授は株高を予想し、インフレを予想するのだ。

「来年、大きな消費ブームがやってくると思う。・・・
少数派の意見であることは自覚しているが、この20年で初めてインフレになると予想している。」

PhD取得後、シカゴ大学でミルトン・フリードマンの下で働いたシーゲル教授からすれば、当然の結論なのだろう。
まさに、マネタリストらしいロジックだ。
ただし、これは決まった未来ではない。
可能性がどれほどあるかはわからないが、企業・個人が受け取ったお金を使わない可能性もある。
危機で弱気になって貯蓄してしまうシナリオだ。
その場合、教授のいうブームは空振りに終わる。

債券を減らせ

シーゲル教授は、金利についても2020年が底になると予想している。

「みんな2020年を振り返って言うだろう。
『ああ、あの時が金利の底だったんだ。』
10年の底だけでなく、一世代の底、もしかしたら永遠に底になるのかもしれない。」

インフレが上昇し、金利も上昇に転ずるとすれば、それが穏やかな上昇だとしても、債券は相対的に不利になる。
すでに現在、債券の実質利回りはマイナス圏にあるが、金利上昇となればキャピタル・ロスが発生する。
償還まで保有しても(上昇した金利で投資できないという)機会損失が発生する。
その損失の性格をシーゲル教授は、債務拡大と低金利政策のコストを債券投資家が負担する構図と説明している。

シーゲル教授は、今後200年の株式の実質トータル・リターンを尋ねられ、5-5.5%と答えている。
過去と比べれば低いものの、債券と比べれば6.5-7%もよいことになる。
シーゲル教授は、老後資金のためのポートフォリオについて、債券の割合を減らすようアドバイスしている。

もはや60-40ポートフォリオはうまくいかない。
債券を40%配分するのは多すぎ、リターンが悪くなってしまう。
私たちは、プロが引退後のためのポートフォリオを組み立てる時には75-25とすべきと考えている。


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