海外経済 投資

今回は大きく違う:ジェレミー・シーゲル
2020年5月20日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、インフレ予想を繰り返し、主要な資産クラスについての見解を述べている。


どんな抗ウィルス薬、抗体、ワクチンが出てきたとしても、生み出されている流動性が異例かつ莫大であることを忘れてはいけない。

シーゲル教授がウィズダムツリーでのウェブキャストで、株式市場に影響を及ぼす要因の軽重について仄めかした。
シーゲル教授は、経済回復の可否を決めるのが医療上の進展であると言い続けてきた。
ワクチンや薬についてあやふやなニュースが流れ市場は反応することについても、慎重であるべきと語っている。

医療の進展は重要だ。
しかし、仮にいつか人類がこのウィルスを封じ込めるか、共存する術を見つけるかすると予想できるなら、医療上の進展は市場においてそれほど大きな材料ではないのかもしれない。
それ以外のテーマにも目を向けるべきなのかもしれない。
シーゲル教授が最近繰り返し口にするのが、前例のない規模の金融・財政政策による「穏やかなインフレ」シナリオだ。

「私が言っているのは、おそらく今後2-3年で4-5%のインフレだ。
これはとても厳しい。
若い人は経験したことがない。
だからとても厳しい。」

シーゲル教授は「4-5%」という「穏やかなインフレ」であっても家計には過酷なインパクトを与えると予想する。
だからこそ備えなければいけない。
のんびりお金を現金・預金・債券においておけばインフレによって購買力を減じられてしまう。

誰がコロナウィルスとの闘いの費用を払うのか?
債券保有者だ。

コロナウィルスに対応するための補助・支援などは(主に)国や中央銀行から拠出されている。
だから、政府の借金が大幅に増えた。
仮に借金が過大だとすれば、将来減らさなければいけない。
これには大きく2つ方法がある: 増税か、いわゆるインフレ税だ。

「これは、インフレで債務を減らす一法だ。
実際、10%のインフレが2-3年積み重なると債務(の実質ベースの価値)が10%、約2兆ドル減る。
つまり、債務を《支払う》1つの方法はインフレだ。」

インフレにより政府の借金の実質的価値を減らすことで債務問題を軽減する方法だ。
これは裏返せば、現金・預金・債券の価値が減ることになる。

シーゲル教授が予想するシナリオに対しては、反対意見も少なくないという。
2009-11年、FRBがQEを実施した時も同様の懸念を述べる人がいたが、現実にはインフレはさほど上昇しなかったとの意見だ。
しかし、教授ははっきりと「今回は違う」と話し、根拠を述べる。

今回は、お金が(人々の)口座に入った。
FRBがQEでやったように、単にお金が超過準備となり使われないでおいておかれるのではない。
・・・今回は大きく違う。
そして、みんな今起こっていることと金融危機後の数年起こったことの違いを理解していないんだ。

QE(量的緩和)とは、市中銀行から中央銀行に預けられた当座預金の残高を増やす営みだ。
この残高自体が経済に何かするわけではない。
しかし、今回はお金の行き先が違う。
給付したり貸し出したりすれば、家計や企業がそのお金を手にする。
おそらく使うお金を与えるための給付・貸出なのだろう。
つまり、このお金は使われる可能性が高い。
これが経済・インフレを過熱させるのではないか。

こうしたインフレ予想をする人は増えているが、もちろん反対意見も存在する。
リチャード・クー氏は、米経済がバランスシート不況に陥る可能性を指摘している。
先行きに不安を残したままでは、家計・企業がお金を手にしても支出せず貯蓄する可能性があるという。
この場合は、景気やインフレが過熱しないことになる。
まさに米経済の日本化を予想したものといえる。

シーゲル教授は、金に対するスタンスも尋ねられている。
インフレ・ヘッジとしての金の有効性についての質問であろう。
教授は、ファンではないとしながらも、コモディティや金も部分的に組み込む可能性があると話す。

「長い年月で初めて、金をポートフォリオに入れてもいいと思う。
繰り返すが、総じていえば株の方がいい。
しかし、金は分散に役立つ。」

金を控えめに奨めながらも、やはり本丸は株式のようだ。
穏やかなインフレ下では株式のパフォーマンスが良好になる傾向があると繰り返している。
前提には現状の拡張的な金融政策がしばらく継続するとの前提がある。

FRBの反応はとても慎重なものになるだろう。
すでに触れたとおり、FRBはインフレのオーバーシュートを容認する。・・・
今年2%分未達があれば、この未達分を取り戻すのに4%必要とFRBは言うだろう。
だから、インフレに強く対抗するような動きは、少なくとも短期的には予想しない。

FRBや米国のハト派エコノミストの中には何が何でも金融緩和を続けたい人がいる。
たとえば、ベン・バーナンキ元FRB議長は「メーク・アップ戦略」と称し、インフレが目標を下回れば後年それを取り戻すよう目標より高いインフレを許容すべきという。
こうしたいかにも恣意的な主張にはもちろん反対意見も多い。
ジェフリー・ガンドラック氏は、こうした考えに対し、何ら経済理論に基づいていないとこき下ろしている。
しかし、そのガンドラック氏にしても、米金利がFRBによって操作され低位に維持されると予想せざるをえない。

シーゲル教授は依然として米国株に強気だ。
教授は景気・市場サイクルの定石を述べている。

株式は穏やかなインフレの下ではとてもパフォーマンスが良い。
FRBが介入しブレーキを踏んだ時だけ問題が起こる。
重ねていうが、回復の初期にそれが起こるとは思わない。


-海外経済, 投資
-, , , , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。