今回のイールド・カーブ逆転はちょっと違う:バイロン・ウィーン

今一番当てているブラックストーンのバイロン・ウィーン氏とジョー・ザイドル氏が定例のウェブキャストを行った。


これは今回の(イールド・カーブ長短)逆転が少し違ったものであることを示している。
いつもの逆転はFRBが短期金利を上げて、長期金利より高くなることで起こる。
しかし、今回は・・・長期金利が短期金利を下回った。

ウィーン氏がウェブキャストで今回のイールド・カーブ長短逆転がいつもと異なる性格のものであると説明した。
同氏が言いたいのは、景気後退まではまだ時間があるということだ。

ザイドル氏がブラックストーンに移籍したのは2018年1月。
高齢のウィーン氏の負担を軽減し、後継とも目されているのであろう。
分析は手堅く、面白い問題提起をするなど、相応の評価を得て、金融メディアへの露出も増えている。
しかし、ここに来て、ウィーン氏との見方の相違も目立ってきている。
その最たるものが、イールド・カーブ逆転や景気先行指標などに基づく景気後退時期の予想だ。
ザイドル氏はデータに基づき、比較的早い時期の景気後退時期を予想するのに対し、ウィーン氏は2021年以降との見方を崩していない。
ウィーン氏の予想には多分に政治的要素が入っているようにも見える。

実効FF金利と米10年債利回り
実効FF金利と米10年債利回り

ウィーン氏の指摘は明確だ。
過去のイールド・カーブ逆転は、主に短期側の要因で起こってきた。
インフレに対処するためにFRBが利上げした結果の産物だった。
上図で長短逆転が起こった時には、青(FF金利)が赤(長期金利)を突き上げる形で起こっている。


実効FF金利と米10年債利回り(今回)
実効FF金利と米10年債利回り(今回)

しかし、今回の逆転は、FRBが利上げをやめた後に勝手に長期金利が下りてきたことで起こった。
ウィーン氏は、この長期金利の低下について、莫大な流動性が逃げ場を求めたために起きたと分析する。

「これは少しいつもとは違う。
たぶん景気後退はザイドル氏が言うほど早く来ないのではないか。
他にも違う点はたくさんある。」

ウィーン氏は、過去3回の景気後退との重要な相違点を列挙した。

  • 実質FF金利: 過去3回は大きなプラス。
  • バブル崩壊: 1990年は日本、2000年はドットコム・バブル、2008年は米住宅バブル
  • インフレ: 原油上昇でインフレが4%超に。

一方で、ウィーン氏は、だからと言って「今回は違う」と言いたいのではないとも断っている。

ウィーン氏のイールド・カーブへの言及は、同氏の金融政策への思いにも関係しているのかもしれない。
ウィーン氏は、FRBがあと1回25 bpの利下げをすると予想し、その後についてはわからないと話した。
ザイドル氏から「どうあるべきか」と尋ねられると

「FRBはここでストップすべきだ。
それが私たちの考えだ。」

と答えた。
米インフレについては強まる要因と弱まる要因が混在している。
しかし、1つ異なるのは、リーマン危機後のようなデフレ/ディスインフレ的な状況ではないことだ。
先行きは不透明だが、すでに2%物価目標の近傍にあることだ。

金利は十分に低い。
何か建設的な目的のために借金をしようとするなら、とても魅力的な条件で借金できる。
だから、金利引き下げは単に株式市場を押し上げるだけで、実体経済を助けることはない。


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