今は金融引き締めの時ではない:ドラッケンミラー

かつてジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンド運用に12年間携わり莫大な利益をもたらしたことで有名なスタンリー・ドラッケンミラー氏が、FRBの金融政策正常化にストップを求めた。
ダウンサイドのバイアスの印象が強い同氏による反対意見は、米金融政策が極めて難しい局面に差し掛かったことを暗示している。


中央銀行は、利上げと流動性引き締めの二連銃を止めるべきだ。

ドラッケンミラー氏とケビン・ウォルシュ元FRB理事がWSJへの寄稿で、FRBの金融政策正常化に異を唱えた。
ドラッケンミラー氏は従来、FRBの非伝統的金融政策を批判してきたが、ここにきて正常化に注文をつけ、2つの懸念材料を挙げている。

  • 世界貿易の鈍化
    「大海でも、米経済を海外の鈍化から隔離はできない。」
  • 米金融市場、特に銀行株の下落
    「10月1日あたりから世界の中央銀行の流動性は逆行を始め、株価は最高値から落ち始めた。
    これは偶然ではない。」

こうした不安材料を考えると、米経済だけは安泰とは言っていられないとドラッケンミラー氏はいう。

「米経済は来年こそ強く推移するだろうが、FRBや政権の大きな政策ミスに耐えるほどの余裕はない。
最近の経済・市場の展開を見る限り、FRBは、今は利上げと流動性引き締めの二連銃を引っ込めるべきだ。」

市場では今後のFRBの利上げへの関心が高まっている。
しかし、それほど注目されていないが、二連銃のもう一発である量的引き締めも重要な要素だ。
量的引き締めがより直接的に長期金利に作用するなら、これが資産価格や実体経済に及ぼす影響は大きい。


「FRBのバランスシートとはマネーの状態を示すものだ。
しかし、ジャネット・イエレンFRB議長時代から、バランスシートについての計画の透明性がほとんど失われた。
世界的な量的引き締めと不透明な経済見通しの時代に、FRBが保有資産について沈黙していることが混乱に結びついている。」

確かに市場でもFRBでも、利上げや中立金利に比べて、バランスシート縮小についての言及・関心が少ないように見受けられる。
市場はともかく、FRBは意図して行っているのだろう。
理論的には、ベン・バーナンキFRB議長(当時)が言ったように、マネタリー・ベースを増やすという意味での量的緩和には効果がない。
ただし、マネタリー・ベースが人々に何らかの期待(誤解)を与えると、それが効果を及ぼすはずとニューケインジアンは主張した。
このため、ニューケインジアンの1人、ケネス・ロゴフ教授は量的引き締めについて、誰も気づかなければ何も引き起こさないと解説している。
だからこそ利上げの方が重視されているのだ。

逆に言えば、誰かが気づいて期待(誤解)を抱くと、それが作用することになる。
量的緩和がプラスに作用したなら、量的引き締めはマイナスに作用する。
そして、市井の人々、市場の人々のすべてが愚か者ではないから、量的引き締めに気づいてしまう。
しかも、気づいた人のすべてが賢人でもないから、期待(誤解)を抱いてしまう。

私たちは政策決定者たちから、QEが実体経済に大きな恩恵をもたらすと聞かされてきた。
もしそうなら、量的引き締めという巻き戻しが代償なしで済むのか?
すべてがおとぎ話のようにはいかないはずだ。


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