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今は追加緩和の必要はない:榊原英資教授
2019年11月19日

青山学院大学 榊原英資教授が、政府・日銀の思惑をくみつつ、当面は追加緩和は必要ないと指摘している。


FRBやECBに比べると日本銀行は1周遅れで金融緩和に向かおうとしている感がある。

榊原教授が論座で、追加緩和の余地はあると強弁する日銀の政策について書いている。
米FRBは、金融政策正常化半ばの年初から「保険的利下げ」とバランスシート再拡大を余儀なくされた。
欧州のECBは、かつてはドラギ前総裁の退任(10月)前に金融政策正常化に踏み出すと見られていたが、それを果たせず、結局、前総裁は包括的追加緩和策を置き土産に退任することとなった。
双方ともにカギとなるのは財政政策ほかの政策へのバトンタッチだ。
FRBが半ばまでにせよ金融政策正常化を進められた要因は(その是非に議論こそあれ)トランプ政権の大規模財政政策による景況感の改善だった。
ECBについては、ユーロ圏が金融政策に過度に依存しているとし、ドイツなどに財政出動を促している。

もっとも、経済が堅調な米国はもちろん、低迷を続ける欧州においても、足元で大規模な景気刺激策が必要なのかについては議論がある。
景気循環サイクルの中で今が刺激すべき底にあたるのか疑問だからだ。
もしも低迷が趨勢的なことならば、解はもっと違うところにあるはずだ。
むしろ、金融・財政政策は循環的な低迷期に温存したいものだろう。

黒田日銀総裁は財務省時代に為替政策の要である財務官を務めた。
為替が経済にどう影響するか熟知しており、今の為替水準はドル円で見ても決して円高ではない。
実質実効為替レートで見れば、むしろ円安だ。

黒田総裁の1つ前の代に財務官を務めた榊原教授は、総裁の胸の内を代弁する。

近い将来で追加緩和が必要なのかどうかについては黒田総裁も必ずしも明確に意識していないのではないだろうか。・・・
成熟段階に達している日本経済にとって1%成長はごく自然なことで、国民の不満は決して高くない。・・・
第二次安倍晋三政権の支持率も50%を超えている。

国民に不満がないとは思えないが、政権への支持率は高い。
もしも不満があるとすれば、それは全体のパイの成長率よりも、公共サービスの恩恵の分配、民間社会における分配に向けられているのかもしれない。

もちろん実質経済成長率が趨勢的に高くなるのならそれに越したことはない。
しかし、それを解決するのは金融・財政政策ではないだろう。
そもそも輸出の為替感応度は低下しているし、金融緩和の本来の趣旨である信用創造も限界が近い。
財政政策の乗数効果は低減しており、借金で成長率を買うことに大した意味はない。
(金融・財政政策、特に財政政策が景気拡大期に趨勢的な成長率を改善しうるのは、その一時的効果を賢く構造改革に生かせる場合だ。)

日銀に追加緩和余地があるのかは大いに疑問だが、仮にあるとするなら、現時点で口先介入だけで済んでいることを喜ぶべきだ。
また、足元の景気・雇用が消費増税でも大きく崩れないのなら、財政当局は次の景気後退期のための財政政策のマージンを増やしたことになる。
いつ景気後退がやってくるのかは予断を許さないが、日本の政策対応の構えは少しはましになったのかもしれない。

榊原教授は、政治的背景まで勘案しつつ結論付けている。

FRBもECBも金融緩和政策を終了しつつあるが、日本銀行も、また、緩和政策で日本経済の下支えをする必要はないのだろう。
日本経済もそこそこ順調、内閣支持率も高いという状況は充分、満足のいくものなのではないだろうか。


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