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人質にとられないようにすべき:モハメド・エラリアン
2020年11月24日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、ジョー・バイデン次期大統領の経済政策に注文を付けている。


ジョー・バイデン次期米大統領は就任後100日、前任者と米国株市場の間で強まった極度の共依存を減らすため長い時間かけて何ができるか考えるべきだ。
バイデン氏は、直面する課題リストの中で、これをとても高い順位にはおかないだろう。
しかし、やり方を決めて伝えるのが遅れるほどに、FRBやECBのリーダーが就任当初に直面したのと同じジレンマに直面する可能性が高まってしまう。

エラリアン氏がFTで、次期大統領の経済政策に対して注文を付けている。

トランプ大統領は、自身の売りを経済と株価に求めた。
株価が上昇すると、それが自身の手柄だと吹聴した。
実際にトランプ政権の経済政策は法人減税など株価を押し上げるものが多かった。
加えて、大統領からプレッシャーをかけられ、また資産効果を重視しているFRBもリスク資産の市場を支え続けた。

結果は皮肉なものだった。
株価は上昇したが、取り残された人たちはやはり取り残されたままになる。
実体経済(メインストリート)と金融市場(ウォールストリート)はいっそう乖離した。
つまり、株価上昇は手柄でも何でもなかったのだ。

エラリアン氏は、この乖離がもたらした弊害をいくつか挙げる。

  • 過度で無責任なリスクテイクが促され、金融不安定化のリスクを増やした。
  • 経済における資源配分が不適切なものになりかねない。
  • 格差拡大が経済・金融機関の完全性・信頼性を損なう。

そもそもパウエルFRB議長は、就任前には決してハト派とは見られていなかった。
平時のうちに金融政策を正常化すべきとの考えを持ち、そのバランス感覚ゆえに多くの人から支持を受けた。
ところが、何度か市場がくしゃみをすると、パウエル議長の方針は急変する。
金融政策正常化はどこへやら、コロナ・ショック前から史上最大規模の金融緩和に転換した。
FRBの中で最もハト派的に見えるほどの豹変ぶりだ。

同様のことがバイデン次期大統領に起こらないとも限らない。
エラリアン氏は、バイデン氏にとって最も抵抗を受けずにすむ方針が、ハトと化した中央銀行家たちに追随することだと書いている。
つまり、弊害に目をつぶってとことん市場や経済を支えるという道だ。

しかし、この安易な道はまた間違った道となるだろう。
大統領就任当初からバイデン氏は、成長を促進するための投資資金を効率的に調達・配分するという本来の目的からすでに大きく逸れている株式市場によって人質にとられないことを確立しないといけない。

実際のところ、リーマン危機後の米市場におけるFRBプットには奇怪なまでの一貫性があった。
市場がくしゃみをするたびにFRBは金融緩和を強化したり正常化を停止したりして市場を再浮揚させるような行動を繰り返した。
エラリアン氏はこれを「人質」と呼んでいる。
いうなれば、FRBは株式市場の言いなり、後追いなのだ。
エラリアン氏は、FRB議長人事について、市場の後追いをする人物でなく、市場を従えるリーダーになりうる人が相応しいと書いている。

バイデン氏はトランプ氏のやり方をすぐに変える必要がある。
この変化は、投資家の長期的利益やうまく機能する市場にも適うものになる。

エラリアン氏のいうことは全くの正論だ。
中央銀行の役割は市場を支えることではなく経済を支えることだ。
資産効果は無視できないが、過度に頼れば弊害も大きい。
これが正論であるにも関わらず、エラリアン氏の文章にはそれを実行するのが難しいことを認める表現が何度も出てくる。
正論であるゆえに実現が難しいのだ。
みんな「長期的利益やうまく機能する市場」より目先の利益を喜ぶものだ。
だから、多くの人が、バイデン次期大統領も市場を支え続けると予想しているのだろう。


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