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中央銀行に訪れる究極の選択:レイ・ダリオ
2020年7月5日

レイ・ダリオ氏のBloombergインタビュー第3弾: 貨幣増発によって市場・経済を支えようとする試みがいつまで継続可能かについて述べられている。


(貨幣増発の)限界は需要と関係しており、需要の限界は中央銀行の買入れに関係している。
中央銀行が買い入れれば、問題がないからだ。
だから、歴史上いつ(中央銀行の買入れが)最大となったかを見て、限界を推測するとよい。

ダリオ氏が、貨幣増発で市場・経済を維持しようという試みがいつまで継続可能かについて尋ねられている。
同氏によれば、民間投資家による需要は限界には関係ないという。
民間投資家が背を向けても、中央銀行が買い続ければよいからだ。
ならば、どこまで買い続けられるのか。
ダリオ氏は歴史にあたるべきとし、現在と最も類似した期間として1930-45年を挙げた。

レイ・ダリオが言いたかった1937年

「まず不況があり、不況でゼロ金利となって貨幣増発・金融資産買入れが行われ、大規模な財政政策が採られた。
この政策では、大きな財政赤字になり、さらにマネタイズされ、戦争に突入した。
戦時中は、多くのマネーと信用が必要だった点で、今とよく似ていた。
莫大なマネーと信用が創出されたが、事実上FRBが引き受ける形で、FRBによって管理された。」

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この発言では、第2次大戦とコロナウィルスとの戦争が並べられている。
FRBは第2次大戦中(1942年)から戦後にかけて、戦費の調達コスト低減のために長期金利を事実上ペッグしていた。
1944年にはブレトンウッズ体制が確立し、長らく世界の金融市場の安定をもたらした。
(一方で、金本位制は経済政策に足かせを課すこととなり、1971年のニクソン・ショックに端を発し終焉を迎えた。)
天才の説明はいつも舌足らずだが、文脈を理解しようと努める限り、(青天井の)貨幣増発が制度として停止されたのはブレトンウッズ協定の1944年だ。

ダリオ氏は、貨幣増発が止まらず、ドルの地位が揺らぐシナリオにも言及する。

「この限界に関して起こりうるのは、もしも何かの原因が、外国の保有者にとっての準備通貨としてのドルの地位を失わせ、他のより良い市場を生み出したらどうなるか。
金かもしれないし、株かもしれないし、・・・人民元など他の通貨かもしれない。・・・
それが起こると、私は起こると考えているが『通貨防衛』のようなものになる。」

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なぜ双子の赤字を拡大し続け(足元では貿易赤字は一服)貨幣増発を続ける米国の通貨が主要な準備通貨の地位を守り続けるのか。
要因は1つではなかろうが、間違いなく重要なのは選択肢が他にないためである。
しかし、仮に他にもっと良い価値の保蔵手段が現れ認知されたらどうなるか。
みんなドルから逃げ始めるのかもしれない。

ダリオ氏はそれに対抗するため米国が「通貨防衛」を余儀なくされると見ているのだ。
同氏によれば、米国は重い決断を迫られることになるという。

マネーが逃避するにつれ、中央銀行がギャップを埋めるために債券買入れを増やすか、金利上昇を容認するかの選択を迫ることになる。
中央銀行は金利上昇を容認できない。
債務が多すぎ、また、金利上昇は資産価格下落を意味し脆弱性を増すからだ。

ダリオ氏は、FRBが債券買入れで対応すると読む。
しかし、それは原因の1つである貨幣増発(ドル)をさらに続け債券(ドル資産)を買い入れるにすぎない。
金利は制御できても、通貨の価値を制御できるものではない。
ダリオ氏は、この選択が米国と世界に悪い結果をもたらすと警告する。

米ドルはとてつもない特権を得ており、その限界を拡げようとしている。
米国がドルの限界を押し広げ、他の通貨と同じにしようと思うなら、もしもそうなるなら、おそらく市場だけでなく全世界の地政学システムにとって最大の混乱要因となるだろう。


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