IMFチーフエコノミスト、インド中銀総裁を歴任したラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、先週のジャクソンホール会議を振り返り、FRBが犯しうるミスを指摘している。
新興国市場は、FRBが前回引き締めた時に起こったことをとても心配している。
テーパータントラムに端を発した展開で、いくつかの国にとって大きな災難となった。
新興国市場は、いつかの時点で先進各国が引き締めに動かざるをえず、FRBが先陣を切ると認識している。
そして、それが起こる時にはゆっくり起こることを願っている。
ラジャン教授がBloombergで、先週のジャクソンホールでのジェローム・パウエルFRB議長の講演についてコメントした。
講演の新興国市場など諸外国にとっての意味を尋ねられ、新興国市場の気持ちを代弁したもの。
新興国市場は、先進国の金融政策正常化プロセスがあらかじめ告知され、市場が反応するのに重要な時間を与えられることを望んでいるという。
その意味で、過度にタカ派的にならないよう配慮した跡のあるパウエル議長の講演は、新興国市場の望む形だったとラジャン教授は評価している。
ラジャン教授は、FRBが犯しうる政策ミスについて尋ねられ、世界金融危機後が繰り返すと信じ込むケースを挙げている。
教授は、世界金融危機後に支配的だった3つの中期的な力(高齢化・自動化・グローバル化)の継続をパウエル議長が信じていると解説する。
これら力は、パンデミック前の世界でインフレを押し下げる力として機能した。
この力がまだ継続していると見るから、パウエル議長はインフレを一過性と考え、金融政策正常化を急ごうとしない。
しかし、ラジャン教授は、世界金融危機後とパンデミック後では1つ大きな違いが存在すると指摘する。
それは巨額の財政支出だ。
これは世界金融危機後にはなかった。・・・
私の心配は、FRBがこれらの力を十分勘案しないと、後手に回ることになるかもしれないことだ。
それが、みんなの言うように、この先引き締めを強めなければならなくするかもしれない。
ジャクソンホールでは、年内のテーパリング開始が適切とのメッセージが出され、これは金融政策正常化への前進であるはずだ。
それなのに、刺激策の効きすぎを危ぶむ人たちの心配はあまり晴れていないようだ。