世界は狂ってしまった:レイ・ダリオ

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、現状の持続不可能な状況を列挙し、近く大きなパラダイム・シフトが起こると予想した。


世界は狂ってしまった。
システムが破壊されている。

ダリオ氏が自身のSNSで、狂いつつある世界と経済について説明している。
同氏は大きく4つの常軌を外した状況が存在していると指摘している。

金融緩和が失わせる金融市場の規律

「お金は信用力のある人にとってはタダになった。
投資家はお金を貸してそれより少ないお金の返済を受けるだけでよしとしているからだ。
・・・
その資金は、経済活動を刺激しインフレを高めようという空しい努力を続ける、各国中央銀行の金融資産買入れによって押し付けられたものだ。」

資本主義社会に規律を与えていた1つの要素は金利だった。
お金を借りて使うことに対してコストを払う。
だから借り手は借金をする時に真剣になり、一生懸命借金を返そうとするものだった。
それが低金利を通り越してマイナスになればどうなってしまうのか、心配する人が増えている。
それでも、もちろんそのデメリットに勝るメリットがあるなら話は別だ。

投資家に押し付けられた資金が経済成長やインフレをさして高めない理由は、それを手にした投資家が使うのではなく投資することを望むためだ。
この力学が『暖簾に腕押し』の力学を生み出しており、これは(私たちの人生の間ではないものの)歴史上以前も何度も起こってきたものであり、私の本『Big Debt Crises』でも徹底的に解説したものだ。
この力学の結果、金融資産の価格は大きく上昇し、将来の期待リターンは経済成長とインフレがぐずぐずする中で大きく低下する。

ダリオ氏が言っているのは、まさに流動性の罠
ゼロ金利近傍で、追加緩和は投機を煽るだけになる。
それは投資のプロの世界にも当然波及する。
ユニコーン企業などに見られる過剰な株価形成だ。

「投資家は莫大な投資資金を有し、過去の革命的テクノロジーの銘柄での成功体験があるため、ドットコム・バブル以来で最も、利益を上げなくても、あるいは黒字化へのめどさえ示さなくても株が売れる状況にある。
こうした企業は、有り余る資金を保有し資金調達力にも優れた投資家に対し、代わりに夢を売っているのだ。」

常軌を逸するのは資産価格だけではない。
そこで活躍する投資のプロの行動様式まで狂わせる。
ダリオ氏は、ハワード・マークス氏が以前指摘していたような逸話を紹介している。


「投資家はこうした企業に対し、出資を受け入れなければライバルのスタートアップに巨額のサポートをすると言って脅迫している。
・・・
これら投資運用者、特にVCやプライベート・エクイティーの投資運用者は、現在巨額の委託資金に未消化分を抱え、顧客への約束を果たしフィーを得るために投資しなければならないのだ。」

財政悪化と国債の消化

特に先進各国で財政悪化が進んでおり、今後も進む可能性が高い。

誰がこうした国債を買い、財政赤字を埋めているのか?
ほぼ間違いなく中央銀行であり、新たに通貨を発行し債務を買い入れている。
健全な財政が放棄された、この一連の力学は、特に準備通貨国とその通貨、米欧日とドル・ユーロ・円において継続し、おそらく加速するだろう。

国債増発のリスク(金利上昇のリスク)を覆い隠すために、リスクが通貨に移転(インフレのリスク)されている。

年金・医療等の社会保障負担増大の表面化

この分野でもまさに《日本化》というべき現象が起こっているようだ。

  • 年金:「目標リターンは通常、価格に織り込まれ実現する可能性の高い市場リターンよりはるかに高く(約7%)設定されている。」
  • 医療:「人口動態の変化の中で、医療を必要とするベビー・ブーマーの人口が増え、それを支える働き手が減るため、この負担を賄う資金も足りなくなる。」

問題に対処する方法をダリオ氏は3つ挙げる:
 1) 給付の削減
 2) 増税・社会保障費引き上げ
 3) 国債発行とマネタイゼーション
どう選択するかで損する人、得する人が出てくるのは当然だ。
これが、格差を隔てた人々の間の「闘いを悪化させる」のだという。
その上で、安きに流れがちな社会が選ぶ選択肢を解説している。

これら3つの方法はどれも悪いものだが、マネタイゼーションが最も簡単だ。
なぜなら、これは最も隠密裏に富の移転を実現し、資産価格を上昇させる傾向があるからだ。
・・・
この方法の大きなリスクは、世界の3大主要準備通貨の富の保存手段としての有効性を危うくすることだ。

これ以外の選択肢ならば「闘いの悪化」が避けられず、国の中でも(米大統領がニューヨークからフロリダに登録を移したように)棲み分けが起こるだろうと予想している。

貧しい者はますます貧しく

「富・機会・政治的ギャップを増やすのに役立つお金・信用力を持たない人たちは、お金を手にするのがとても困難になる。
このギャップを大きくする別の要因が技術の進歩だ。・・・
『トリクルダウン』が・・・効いておらず、大多数のために資本主義を役立たせるためのシステムが壊れてしまっている。」

ダリオ氏は、リーマン危機後とは異なり、もはやこうした状況が望まれ容認される状況ではないと指摘する。
これら状況は持続可能ではないとして、近く世界に「大きなパラダイム・シフト」が起こると予想している。


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