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一番やっかいな3つ目の格差:モハメド・エラリアン
2020年10月21日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、ある教育現場で起こった現象を紹介し、大統領選挙後の政権に注文をつけている。


ある数字に衝撃を受けた。
それは、国内で第2の大きさのLA学区の数字だ。
同学区がオンライン授業を始めたところ、30%の生徒との接点が失われたという。

エラリアン氏がCNBCで、コロナ・ショックが子供たちの教育環境に及ぼす悪影響について心配した。
同氏によれば、これは氷山の一角にすぎないという。

今回が恐ろしいのは、富(資産)の格差が悪化したことだけではない。
所得の格差も悪化している。・・・
しかし、最悪で、私がもっとも心配するのは、機会の不均等だ。

エラリアン氏は、米国の活力の源泉の1つだったアメリカン・ドリームの前提が崩れかねない現状を心配している。

富や所得が少ないことはもちろん悲しいことだが、将来の夢があれば頑張れる人も多い。
しかし、将来のチャンスが失われれば、人々の士気も失われかねない。
そのチャンスを与えてきた一因が教育だったはずだ。
ところが、コロナ・ショックは教育の機会にまで格差を持ち込んでしまった。

エラリアン氏は、仮に民主党による政権ができた場合でも、財務長官など高官人事にさほど心配していないという。
下馬評で上がっている人たちはいずれも適格な能力を備えていると思われるからだ。
エラリアン氏は、むしろ政権の実施する政策自体に注文をつける。

心配するのは、重要なのが、金融・財政政策を越えて政策を実行できるかにある点だ。
私たちは金融・財政政策に注目しがちだが、同様に重要な3つ目の要素もある。
それは生産性の向上だ。

コロナ・ショックから立ち直るにも、追って立ち向かうことになる債務問題を解決するにも、経済成長が必要になる。
そして、それを支えうる好ましい要因が生産性向上だ。
生産性の向上は短期的に実現するものではない。

債務問題と生産性向上には悩ましい関係性も存在する。
アラン・グリーンスパン元FRB議長は以前から、長期的な債務増大と生産性の問題を指摘してきた。
たとえば、1990年代まだ債務問題が深刻でなかった頃、生産性向上に資する投資が行われ、それが《インフレなき景気拡大》を実現した。
しかし、その後、社会保障負担などを主因とする債務・負担の増大が、生産性向上のための投資をクラウディング・アウトしてきたという。
結果、生産性向上は低迷し、経済成長の足かせとなっているという。

もちろん、足元で見た時に短期的にクラウディング・アウトが悪化したはずはない。
すでに昨年からFRBは皆が驚くような流動性供給を行い、長期金利も低位にとどまっている。
今や、FRBはフォールン・エンジェルまで買っている。
だから、この問題があまり意識されていない。

最も厄介なのは、経済が本格的に回復する場合だ。
本来喜ぶべきことが懸念材料になりかねない。
仮に現在の異例に拡張的な金融・財政政策が巻き戻すなら、その時のクラウディング・アウトはいかばかりか。
(本来なら財政の引き締めはクラウディング・アウトと逆の効果を引き起こすはずだが、金融引き締めが起こるなら、ネットでは分が悪いかもしれない。
拡張的な金融・財政政策でクラウディング・アウトが防がれていたのだから、その巻き戻しは逆の効果を及ぼす可能性がある。)
そして、生産性向上なき景気回復はインフレを引き起こさないのか。
クラウディング・アウトを恐れて金融緩和を継続するならなおさらだ。


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