ワイルドな経済では円は買われ100円へ:榊原英資教授

ミスター円こと青山学院大学 榊原英資教授が、ドル円相場の当面の見通しを1ドル105-110円のレンジとし、その後100円を目指すと予想している。


(ドルは)105-110円の値動きとなるだろう。
最後には100円を目指すと予想している。

榊原教授がBloombergインタビューで、ドル円相場の予想を語った。
相場の硬直が解けないこともあろうが、今回の予想も従前と同じ予想となっている。
教授は、円が引き続き「安全資産」(safe haven)かとの質問にもYesと答えている。
ただし、その趣旨が「安全資産」という言葉にふさわしいかははっきりしない。

「ワイルドな経済、全体が混乱するような状況では、円は買われる傾向がある。
これがよりゆっくり起こってきたと考えている。
円はゆっくりと変われ、100円を目指すだろう。」

榊原教授は、1ドル90円、80円となれば問題だが、100円なら問題ないと話した。

日銀の金融政策については、現状程度の経済ならば現状維持になるとの見通しを示した。
一方、財政政策については、財政状況を考えると継続的な拡大は難しいと指摘した。

「現時点の成長率は0.8-0.9%とわずかに1%を切る状況だ。
1990年代以降、成長率の平均は1%超だから、現在は平均なみの率で巡航していることになる。
黒田総裁が不満だとは思わないし、私もこれでいいと思う。」

日本経済の先行きについて、榊原教授は、米中貿易摩擦、中国経済の減速、北朝鮮にかかわる政治混乱などの外的ショックがあれば悪影響を受けうるとしたものの、現状ではそれほど心配していないと話した。
消費増税の影響も、かなり前からアナウンスされてきたため、人々の期待に織り込みずみだったとし、悪影響はさほど大きくないと予想した。

インタビュアーは、物価目標に遠く及ばない日銀が追加緩和をしないという榊原教授の見通しに疑問を感じたようだ。
日銀の物価目標のあり方について教授の見方を引き出している。

日本は2%物価目標には永遠に到達しないだろう。
2%は、インフレ率がとても高い時の目標だ。
今では日本だけでなくいたるところでディスインフレーションになっている。
黒田総裁はまだ2%目標を掲げているが、もう信じてはいないだろう。


なぜ目標を撤回・変更をしないのかとの問いに、榊原教授は「いろんなところでいろんな悪い影響が起こりうるから」と答えている。
成長率1%、物価上昇1%でいいとするのは、政府・日銀の目標を達成しなくてもいいというに等しい。
教授がここまであからさまに言うのには、日本の現状を停滞としてではなく「成熟」として見ているからだ。

「これはおそらく先進国経済の成熟期を示すものだろう。
日本はすでにかなり豊かだ。
1%成長で十分なだけの豊かさなんだ。
1%の経済成長に不満を持っている日本人が多いとは思わない。」

これはかなり的を射ている話だ。
世の中には日本社会の経済的な面に不満を持っている人は多い。
しかし、そうした人たちの不満とは格差であったり、雇用・賃金であったり、社会インフラ・社会保障である。
決して1%成長に文句を言っているのではないし、ましてやインフレが低すぎると嘆いている人は皆無に近い。
全体の数字も大切ではあろうが、もっと大切なのは中身なのだろう。

日本の現状を楽観する榊原教授からすれば、世界中で徐々に心配する声が増えているスタグフレーションも、少なくとも日本においては杞憂ということになる。

「日本は実質成長率が1%、低いインフレ率が1%、1%-1%の状況だ。
だから、いわゆるスタグフレーションをそう心配する必要はないだろう。」

確かに何ごとも過度に心配するのはよくない。
そもそも社会への影響力の大きい元財務高官が経済の心配事をペラペラ話すはずもない。
しかし、それでも榊原教授の話は楽観的すぎないか。
インタビュアーはそう感じたようだ。
ビデオ最後の質問は「今最も恐れることは?」だった。

「ハハハハハ・・・
私は何も心配していないよ。
ハハハハハ・・・
もちろん財政赤字には対処しなければいけない。」


 - 国内経済, 投資, 政治 ,