キニコス・アソシエイツのジム・チャノス氏が、独フィンテック企業で起こった資金消失事件を分析している。
典型的に、景気拡大が続き強気相場が続くにしたがい、不信感は低下し、真実にしてはあまりにも良すぎることでもみんな信じ始めるようになる。
・・・疑わしい事業モデルの企業でも資金調達できるようになる。
ワイヤーカードは昨年ソフトバンクの関連会社から資金調達したが、ついでながらそれ自体が皮肉だ。
チャノス氏がBloombergで、景気・市場サイクルと金融詐欺の関係について持論を述べた。
拡大期に詐欺が増え、縮小期に遅れをともなって詐欺が発覚するというものだ。
ここで挙がった企業ワイヤーカードは決済分野の独フィンテック企業。
同社は前期決算発表を度々延期し、結果、株価が急落している。
監査法人E&Yが約19億ユーロについて虚偽の残高証明書が呈示されたと指摘する事態となった。
この資金がそもそも存在しなかった可能性が高まり、事実なら、決済サービスの会社が莫大な粉飾に手を染めていたことになる。
チャノス氏は、ワイヤーカードがこれまで利益を上げたことがないと推測してきた。
今回不正が濃厚となり、その読みが正しかったのだろうと話している。
証拠は積み上がっていた。
この会社はわが社が海外で行うショート、ヘッジとして最大の銘柄だ。
何かとてもおかしなことが起こっていた昨年、反論できない証拠があった。
少なくとも昨年1月には、FTがワイヤーカードの不正会計を報じていた。
ところが、同社はここでは持ちこたえる。
4月にはソフトバンクGから転換社債で約9億ユーロを調達している。
複数の大学で講義を持っているチャノス氏は、寛容な資本市場に驚いて見せた。
この会社については、この1-2年あらゆる種類の兆候がメディアで証拠つきで報道されてきた。
証拠が呈示されているのに、みんなそれでも、E&Yの監査の遅れでそれを隠せなくなるまで、何度も何度も疑わしきは罰せずと許してきた。
これは驚くようなケース・スタディーになる。
私の「金融詐欺の歴史」の講義でケースとして扱うことになるだろう。